借家法第五条は、賃借人の債務不履行ないしその背信行為のため賃貸借が解除されたごとき場合には、その適用がないものと解すべきである。
債務不履行その他背信行為による賃貸借の解除と借家法第五条の適用の有無
借家法5条
判旨
賃借人の債務不履行による解除によって建物の賃貸借が終了した場合には、借家法5条(現行借地借家法14条)の建物買取請求権の規定は適用されない。
問題の所在(論点)
賃借人の債務不履行を理由とする賃貸借契約の解除がなされた場合に、賃借人は旧借家法5条(現行法の建物買取請求権の趣旨に相当)に基づき、建物買取請求権を行使できるか。
規範
借地借家法における建物買取請求権(旧借家法5条参照)は、期間満了等の通常事由により賃貸借が消滅した場合を想定した規定である。したがって、賃借人の債務不履行または背信行為を理由とする解除によって賃貸借が終了した場合には、同条の適用はないと解すべきである。
重要事実
建物の賃借人(上告人)が、賃貸人(被上告人)との間での賃貸借契約を締結していたが、賃借人側の債務不履行または背信行為を理由として賃貸借契約が解除された。これに対し、賃借人が旧借家法5条に基づき建物買取請求権を主張した事案である。
あてはめ
本件では、建物の賃貸借が期間満了等の通常の事由によって消滅したのではなく、賃借人の債務不履行または背信行為を理由とする解除によって終了している。このような終了原因は賃借人の帰責事由に基づくものであり、公平の観点から、法が通常の消滅を前提として認めている買取請求権の規定を適用して賃借人を保護する必要はないと判断される。
結論
債務不履行解除による賃貸借の終了については、建物買取請求権の規定は適用されないため、上告人の請求は認められない。
実務上の射程
本判決は旧借家法に関するものであるが、現行の借地借家法13条(借地権者の建物買取請求権)や33条(造作買取請求権)の解釈においても、債務不履行解除の場合には適用を否定する確立した実務上の準則として機能する。答案作成上は、信義則や法の趣旨を根拠に、帰責性ある終了者を保護しない論理として用いる。
事件番号: 昭和27(オ)634 / 裁判年月日: 昭和28年7月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸借契約の解除において、正当な事由があると認められる場合には、当該解除は適法であり有効である。 第1 事案の概要:賃貸人(被上告人)が賃借人(上告人)に対し、本件賃貸借契約の解除を求めて提訴した。原審は、諸般の事情を考慮した結果、賃貸人による解除には正当な事由があるものと認定し、賃借人の上告理由…