判旨
賃借人の債務不履行により賃貸借が解除された場合、賃借人は造作買取請求権を行使できない。また、増築部分が既存建物に附合し独立性を欠く場合には、借地権の発生や借地法(旧法)の適用も否定される。
問題の所在(論点)
1. 賃借人の債務不履行により解除された場合に、造作買取請求権(借家法5条等)を認めるべきか。2. 増築部分が建物に附合した場合に、借地権の発生や建物買取請求の余地があるか。
規範
1. 賃借人の債務不履行による解除によって賃貸借が終了した場合には、誠実な契約履行を前提とする造作買取請求権の行使は認められない。2. 増築部分が既存建物と構造上・経済上の独立性を有さず、民法242条本文により附合したと認められる場合には、当該部分について独立の所有権や借地権が成立する余地はない。
重要事実
賃借人(上告人)が賃貸人(被上告人)から借りていた建物等に関し、賃借人の債務不履行を理由に賃貸借契約が解除された。賃借人は、建物に施した造作の買い取り、および宅地上に増築した建物部分についての買取請求や借地権の主張を行った。しかし、当該増築部分は構造的・経済的に既存建物と一体化しており、独立性が認められない状態であった。
あてはめ
1. 本件では上告人の債務不履行によって賃貸借が終了しており、かかる帰責事由がある賃借人を保護する必要はないため、造作買取請求権は発生しない。2. 上告人が主張する増築部分は、構造上の独立性がなく、かつ経済上の効用も単独では認められない。したがって、民法242条本文により既存建物に附合したものと解され、被上告人の所有に帰属する。独立した建物としての実体を欠く以上、借地権の発生や借地法の適用を肯定する前提を欠く。
結論
債務不履行解除の場合、造作買取請求は認められない。また、既存建物に附合した増築部分について、賃借人が借地権を主張することはできない。
実務上の射程
債務不履行解除と造作買取請求権の関係を明確にした重要判例である。答案上では、信頼関係を破壊した賃借人に買取請求権という強い権利を認めるのは公平に反するという趣旨から論じる。また、民法242条の附合の判断基準(構造上・経済的独立性)の適用場面としても活用できる。
事件番号: 昭和33(オ)719 / 裁判年月日: 昭和36年7月21日 / 結論: 棄却
借地上の建物の賃借人が空地に建物を無断で増築した場合でも、増築部分が賃借建物の構造を変更しないでこれに附属せしめられた一日で撤去できる程度の仮建築であり、しかも賃借建物は賃借人が自己の費用で適宜改造して使用すべく家主において修理しない約定で借受けた等の経緯であるときは、賃借人の右増築行為は、建物の賃貸借契約を解除しうる…