旧民法第八八六条による親族会の同意を得なければならない法律行為を親権者が右同意なしに行つた場合、その行為は当然無効とならず、旧民法第八八七条による取消がなされていないかぎりは有効として取扱われる。
旧民法第八八六条による親族会の同意を得ないでした親権者の法律行為の効力
民法601条,旧民法886条,旧民法887条
判旨
親権者が親族会の同意を欠いて行った法律行為は、当然に無効となるものではなく、旧民法887条(現行法上の取消規定に相当)により取り消されない限り有効として取り扱われる。
問題の所在(論点)
親権者が法令上必要な同意(本件では旧民法886条の親族会の同意)を得ずに子を代理して行った合意解除の効力はどうなるか。また、その無効を主張するためには何が必要か。
規範
親権者がその職務を行うに際し、法令上必要とされる同意(旧民法における親族会の同意等)を得ずに行った行為は、当然無効ではなく、取消しうる行為にすぎない。したがって、適法な取消権の行使がない限り、当該行為は有効なものとして効力を維持する。
重要事実
亡Dの有していた建物の賃借権は、家督相続により幼少の子である上告人A1に承継された。しかし、親権者である母A2は、A1を代理して賃貸人(被上告人)との間で本件賃貸借契約を合意解除し、改めてA2個人として賃貸借契約を締結した。これに対し、A1らは当該合意解除には親族会の同意がなく無効であると主張して、賃借権の帰属を争った。
あてはめ
本件における賃借権の合意解除は、親権者が親族会の同意を得ずに行ったものであるが、旧民法887条の規定に照らせば、このような行為は「取消し」の対象となるにとどまる。本件記録上、上告人らによって取消権が行使された事実は主張・立証されていない。そうである以上、たとえ同意を欠いていたとしても、当該合意解除は有効なものとして取り扱わざるを得ない。
結論
親族会の同意のない合意解除も、取り消されない限り有効である。取消権行使の主張立証がない本件では、合意解除は有効であり、上告人の請求は認められない。
実務上の射程
親権者による同意欠缺行為の効力が「取消しうる行為」であることを示した。現行民法下でも、制限行為能力者の行為や利益相反行為(民法826条)等の効果を論じる際、適法な取消しがない限り有効に存続するという構成を維持する上で参考となる。
事件番号: 昭和36(オ)167 / 裁判年月日: 昭和37年4月5日 / 結論: 棄却
滞納家賃が三箇月分以上に達したときは、賃貸人は賃借人に対し、催告等の手続を経ることなく、直ちに賃貸借契約を解除することができる旨の特約は、借家法第六条の特約には当らない。