旧民法施行当時、子と家を異にする母が、親権者母たる資格において子の法定代理人として締結した賃貸借には、新民法附則第四条によつて新民法を適用すべきでない。
新民法附則第四条により新法の遡及効を認め得ない一事例
民法附則4条,民法818条2項,民法824条,旧民法884条,旧民法877条2項
判旨
新民法施行前の法律行為の効力については、民法附則に特段の定めがない限り、行為時法である旧民法が適用されるため、旧民法上の親権者要件を欠く者の代理行為は無効である。
問題の所在(論点)
新民法施行前に行われた親権者の代理行為の効力について、新法と旧法のいずれが適用されるか。また、旧民法下で氏を異にする母が「家に在る母」として法定代理権を行使できるか。
規範
民法附則に新旧いずれの法規を適用するかにつき明文がない場合、民法附則4条本文の規定に照らしても、遡って新法を適用すべきものとは認められない。したがって、原則として行為時法が適用されるべきである。旧民法下において母が未成年の子の法定代理人として法律行為を行うためには、単に親権者であるだけでなく、「家に在る母」であることを要する(旧民法884条、877条2項)。
重要事実
昭和20年8月及び昭和22年1月、佐藤Dは未成年の子である駒橋Eの親権者母として、Eの法定代理人の資格で本件家屋の一部を被上告人らに賃貸した。しかし、DはEと氏を異にしており、当時の旧民法の規定における「家に在る母」の要件を満たしていなかった。その後、民法が改正され「家に在る」という要件は撤廃されたが、本件賃貸借の有効性が争点となった。
あてはめ
本件賃貸借契約が締結された昭和20年及び22年は、新民法施行前であり旧民法が適用されるべき時期である。民法附則に新法を遡及適用する旨の明文はなく、行為時法主義に基づき旧民法を適用すべきである。佐藤Dは駒橋Eと氏を異にするため、旧民法884条等の規定する「家に在る母」には該当しない。したがって、DはEの法定代理人としての資格を有しておらず、本件賃貸借契約を有効に締結する権限を欠いていたといえる。
結論
佐藤Dが親権者として行った本件賃貸借は、旧民法上の法定代理権を欠くため無効である。被上告人らは借家法1条1項による対抗力を取得できず、上告人の請求を排斥した原判決は破棄を免れない。
実務上の射程
法の不遡及の原則(行為時法主義)を確認した判例である。改正法が施行された際、経過措置(附則)に明文がない限り、過去の法律行為の有効性は当時の法律によって決せられる。実務上、相続や親族関係が絡む古い法律関係を確定させる際、当時の条文(旧法)の具体的な要件充足性を厳格に検討する必要があることを示唆している。
事件番号: 昭和25(オ)54 / 裁判年月日: 昭和27年12月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法295条2項の類推適用により、賃貸借終了後の不法占有中に支出した有益費等に基づき留置権を主張することは認められない。 第1 事案の概要:建物の賃借人(上告人)は、賃貸人(被上告人)から正当事由に基づく解約申入れを受けた。賃貸借契約は、申入れから6ヶ月の経過により終了したが、上告人は建物を明け渡…