他世帯との同居を命じた判決は、憲法第二五条に違反しない。
他世帯との同居を命じた判決と憲法第二五条
憲法25条,民訴法182条
判旨
賃貸借の解約申入れにおける正当事由の判断では、家主側の自己使用の必要性のみならず、借家人の居住の安全を確保するための配慮も考慮されるが、適切な措置が講じられていないことのみをもって直ちに正当事由が否定されるわけではない。
問題の所在(論点)
旧借家法1条の2にいう「正当の事由」の判断において、家主側が借家人の居住確保のための措置(代替物件の提供や立退料等)を講じていない場合に、他の事情のみをもって正当事由を肯定できるか。
規範
借地借家法(旧借家法1条の2)に基づく解約申入れの「正当の事由」の有無を判定するにあたっては、家主側に存する自ら使用することを必要とする程度その他の事情の外、借家人の居住の安全が害されないか、あるいはその居住が危険にさらされることを防ぐために新家主において当時の社会的な評価上納得のゆく処置(立退料の提供等)を講じたかどうかを総合的に考慮して判断する。ただし、借家人の居住につき適当な措置が講じられていない一事をもって、直ちに正当事由が否定されるものではない。
重要事実
家主である被上告人が、自己使用の必要性を理由に借家人である上告人に対し、建物賃貸借の解約申入れを行った。上告人(借家人)には移転先の目あてがなく、また被上告人(新家主)においても、上告人の居住を確保するための代替物件の提供や、居住を継続させるための具体的な社会的措置を講じていなかった。原審は、これらの事情を認めつつも、家主側の自己使用の必要性等諸般の事情を重視し、正当事由を認めて解約を有効と判断したため、上告人が理由の齟齬等を主張して上告した。
あてはめ
本件において、被上告人(家主)は自ら本件家屋に居住する必要性という「所有者の利益」を有している。一方、上告人(借家人)には移転先がなく、被上告人側で居住に関する適当な措置も講じられていない。しかし、正当事由の存否はこれらの要素を総合的に考慮すべきものであり、借家人に対する保護的措置が欠けていることが直ちに正当事由を阻害する決定的要因になるわけではない。家主側の自己使用の必要性が借家人の居住の必要性を上回るなどの諸般の事情がある場合には、総合評価として正当事由を肯定することが可能である。
結論
家主側において借家人の居住確保のための適当な措置を講じていない場合であっても、家主側の自己使用の必要性その他諸般の事情から、解約申入れに正当事由を認めることは妨げられない。
実務上の射程
正当事由の判断における「総合考慮」の枠組みを示す。特に、立退料や代替物件の提供(いわゆる補完的事由)が必須の要件ではなく、あくまで要素の一つに過ぎないことを明示した点に実務上の意義がある。答案では、正当事由を「家主側の事情」と「借家人側の事情」の比較衡量とする際、補完的事由の欠如をどう評価するかという文脈で活用できる。
事件番号: 昭和24(オ)96 / 裁判年月日: 昭和25年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃貸人の自己使用の必要性は、単に個人的・主観的な見地からではなく、社会的・客観的立場から考察すべきであり、当事者双方の利害を比較して正当性の有無を判断すべきである。 第1 事案の概要:上告人(賃貸人)は、本件建物を自ら使用することを目的として、被上告人(賃借人)に対し解約の申入れおよび明渡しを求め…