判旨
賃貸借契約の解約申入れにおける「正当の事由」の存否は、賃貸人及び賃借人双方の建物の使用を必要とする事情等を総合的に考慮して判断される。本件では、賃貸人側の事情が優先され、解約申入れに正当事由があると認められた。
問題の所在(論点)
建物賃貸借の解約申入れにおいて、旧借家法1条の2(現行借地借家法28条参照)にいう「正当の事由」が認められるか、および賃料損害金の請求の当否が問題となった。
規範
建物賃貸借の解約申入れが効力を生ずるためには、借地借家法(旧借家法1条の2)に定める「正当の事由」が必要である。この正当事由の有無は、賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情のほか、賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況、建物の現況、立退料の提供の有無等を総合考慮して判断すべきである。
重要事実
被上告人(賃貸人)が、上告人(賃借人)に対し、本件建物の賃貸借契約の解約を申し入れた。上告人は、解約申入れに「正当の事由」がないとして争うとともに、昭和25年8月分の賃料損害金の支払いや供託の事実についても争点となった。なお、被上告人は上告審において一部の請求を放棄している。
あてはめ
原審において認定された事実関係に基づき、被上告人(賃貸人)が建物を必要とする事情が、上告人(賃借人)の事情に優先すると判断された。最高裁は、この原審の判断に違憲や判例違反の点はなく、正当であるとした。また、特定の賃料損害金については、口頭弁論期日で請求の放棄がなされたため、検討を要しない。その他の供託に関する主張も、事実認定の争いに過ぎず採用できない。
結論
本件解約の申入れには正当の事由が認められ、賃貸借契約は適法に終了したものとして、上告を棄却した。
実務上の射程
借地借家法28条(旧借家法1条の2)の正当事由に関する事例判断である。実務上、正当事由の有無は事実認定に強く依存するため、賃貸人側の必要性と賃借人側の必要性を比較衡量し、必要に応じて立退料による補完を検討する際の基礎的な枠組みを示すものである。
事件番号: 昭和36(オ)799 / 裁判年月日: 昭和38年11月1日 / 結論: 棄却
(省略)