弁護士たる資格を喪失した後の訴訟代理人が訴訟に関与した訴訟手続のかしは、本件のごとき場合、原判決になんらの影響も及ぼさない。
弁護士資格の喪失後の訴訟代理人の訴訟行為
民訴法79条1項
判旨
訴訟代理人である弁護士が資格を喪失した後に単独で行った訴訟行為であっても、他の共同訴訟代理人が適法に訴訟を遂行しており、かつ当該行為を証拠から除外しても判決の結果を左右しない場合には、判決に影響を及ぼす違法とはならない。
問題の所在(論点)
訴訟代理人が弁護士資格を喪失した後に執り行った訴訟行為が存在する場合、その瑕疵を理由に原判決を破棄すべきか。すなわち、代理権のない者の訴訟行為が判決に及ぼす影響の有無が問題となる。
規範
訴訟代理権の欠缺等の訴訟手続上の瑕疵が、判決に影響を及ぼすべきものといえるか否かは、当該不適法な行為を除外してもなお他の適法な証拠や手続によって判決の基礎となる事実認定が可能であるか、あるいは他の適法な代理人による訴訟追行によって当事者の権利保護が実質的に図られているかという観点から判断される。
重要事実
上告人の訴訟代理人であった弁護士Eが、訴訟係属中に登録取消により弁護士資格を喪失した。しかし、その後に行われた原審の口頭弁論には、共同訴訟代理人である他の弁護士が常に出席して適法な訴訟行為を継続していた。資格喪失後のEが単独で行った訴訟行為は、最終口頭弁論期日における上告会社代表者本人への訊問のみであった。原審はこの訊問結果の一部を事実認定に用いたが、当該事実は他の証拠によっても十分に認定可能なものであった。
あてはめ
本件では、資格喪失後の弁護士Eが関与した行為は限定的な本人訊問のみであり、訴訟全体を通じては別の適法な訴訟代理人が常に出席して防御を尽くしている。また、原審がEの関与した訊問結果を事実認定の資料とした点についても、当該証拠を除外したとしても他の客観的証拠等によって同一の事実を十分に認定し得る。したがって、Eの不適法な訴訟行為は原判決の結論を左右するものではなく、判決に影響を及ぼすべき違法とはいえない。
結論
弁護士資格喪失後の訴訟行為があったとしても、他の代理人による適法な追行があり、かつ当該行為を除外しても判決の結果に影響がない場合には、上告理由とはならない。
実務上の射程
訴訟代理権の欠缺や代理人の資格喪失という重大な手続違背であっても、民事訴訟法上の破棄事由となるためには「判決に影響を及ぼすべきこと」が必要である。実務上は、共同代理の有無や代替的な事実認定の可否を検討し、手続的正義の要請と訴訟経済のバランスを考慮して瑕疵の治癒や影響を判断する際の指標となる。
事件番号: 昭和33(ヤ)4 / 裁判年月日: 昭和36年1月27日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】訴訟代理人が適法に提出した上告理由書は、その後に代理権が消滅したとしても有効であり、これに基づき判決をすることは民事訴訟法上の代理権欠缺(再審事由)には該当しない。 第1 事案の概要:再審原告の前上告審において、当時の訴訟代理人(弁護士)が上告理由書を提出した。その後、当該代理人は再審原告本人によ…