判旨
訴訟代理人が適法に提出した上告理由書は、その後に代理権が消滅したとしても有効であり、これに基づき判決をすることは民事訴訟法上の代理権欠缺(再審事由)には該当しない。
問題の所在(論点)
訴訟代理人が適法に提出した上告理由書に関し、その後の代理権消滅後になされた判決に、代理権の欠缺(旧民訴法420条3号、現行338条1項3号)という再審事由が認められるか。
規範
訴訟代理人がその権限に基づいて適法に行った訴訟行為は、その後の代理権の消滅によってその効力を失うものではない。したがって、適法に提出された上告理由書に基づき裁判所が判断を行うことは、代理権のない者が訴訟行為を行ったことを理由とする再審事由(民事訴訟法第338条第1項第3号)には当たらない。
重要事実
再審原告の前上告審において、当時の訴訟代理人(弁護士)が上告理由書を提出した。その後、当該代理人は再審原告本人によって解任されたが、前上告審裁判所は提出済みの当該上告理由書について判断を示して判決を確定させた。これに対し、再審原告は、解任後の代理人の行為に基づき判決がなされたことは代理権の欠缺にあたる等と主張して、再審の訴えを提起した。
あてはめ
本件において、上告理由書を提出した弁護士は、提出当時において適法な代理権を有していた。その後に本人が代理人を解任したとしても、既に有効になされた訴訟行為(上告理由書の提出)の効果が遡及的に消滅するものではない。前上告審がこの有効な書面に基づき判断を下したことは適法な訴訟手続の範囲内であり、代理権を欠く者が訴訟行為を行ったという事態には該当しないと解される。
結論
本件再審の訴えは、適法な再審事由を欠くものとして却下される。
実務上の射程
事件番号: 昭和31(オ)723 / 裁判年月日: 昭和32年12月28日 / 結論: 棄却
最終の口頭弁論期日に訴訟復代理人として出頭した者に代理権が存しなかつたとしてもその者が弁論その他実質的に本案に関する訴訟行為を為さなかつたときは、当時既にその攻撃防禦の方法の提出を了り右が判決に影響を及ぼす蓋然性がないと認められる限り、右期日に為された最終弁論に基いて為された判決に民訴第四二〇条第一項第三号所定の再審事…
訴訟代理人の行為時における代理権の有無が基準となることを確認した事例である。代理権消滅後の訴訟手続の進行(判決等)において、過去の有効な訴訟行為を基礎とすることは「代理権の欠缺」には当たらないという実務上の基本的な理屈を示す際に有用である。
事件番号: 昭和36(オ)674 / 裁判年月日: 昭和37年5月1日 / 結論: 棄却
弁護士たる資格を喪失した後の訴訟代理人が訴訟に関与した訴訟手続のかしは、本件のごとき場合、原判決になんらの影響も及ぼさない。
事件番号: 昭和32(ヤ)40 / 裁判年月日: 昭和35年3月8日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】当事者本人の供述が虚偽であることを理由に再審の訴えを提起する場合、民事訴訟法338条1項7号の類推適用または適用により、罰すべき行為について有罪の判決等が確定していること等の要件を満たす必要がある。 第1 事案の概要:再審原告は、東京高等裁判所の判決の証拠となった再審被告本人の供述が虚偽であると主…
事件番号: 昭和33(オ)1017 / 裁判年月日: 昭和36年4月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第一審における訴訟代理人の権限は、特段の事情がない限り、同一の事件について上訴審における代理権をも含むものと解される。 第1 事案の概要:上告人は、原審(控訴審)において被上告人を代理した弁護士に代理権がなかった旨を主張して上告した。しかし、記録上、当該弁護士に対しては第一審段階で訴訟代理委任状が…