弁護士甲が第一審において乙の適法な訴訟代理権を有しなかつたとしても、控訴人乙から適法な委任を受けた弁護士丙が控訴審において乙の訴訟代理人として当該訴訟の本案について弁論をし、訴訟を進行し、判決を受けたときは、丙は甲の従前の訴訟行為全部を追認したものというべきである。
訴訟行為の追認
民訴法87条,民訴法54条
判旨
当事者間に契約が成立した旨の主張に対し、裁判所が代理人を通じて契約が成立したと認定することは弁論主義に反しない。また、無権代理人による訴訟行為であっても、適法な代理人が本案について弁論し訴訟を進行した場合には、従前の訴訟行為を追認したものと解される。
問題の所在(論点)
1. 当事者間での契約成立の主張に対し、裁判所が「代理人による成立」を認定することが弁論主義(主要事実の主張立証責任)に反するか。2. 無権代理人が行った訴訟行為について、後に選任された適法な代理人が本案弁論を行った場合、追認が認められるか。
規範
1. 契約成立の主張に対し、主要事実としての合意の存否が争点となっている場合、本人間の合意か代理人を介した合意かは法律効果を発生させるための具体的態様にすぎず、代理人による成立を認定しても弁論主義に違反しない。2. 訴訟代理権を欠く者の訴訟行為であっても、後に適法な代理権を得た者が本案につき弁論を行い訴訟を進行させたときは、特段の事情がない限り、従前の訴訟行為を包括的に追認したものとみなされる。
重要事実
上告人らは、被上告人との間で本件建物を担保とする金銭消費貸借および代物弁済予約の成否を争った。第一審において上告人らの代理人と称する弁護士別府氏が訴訟を遂行したが、同人は適法な代理権を有していなかった可能性がある。しかし、第二審では適法に委任を受けた弁護士一松氏が上告人らの代理人として選任され、本案について弁論を行い、判決を受けるに至った。また、被上告人は当事者間での契約成立を主張していたが、原審は代理人Dを介した契約成立を認定した。
あてはめ
1. 契約の成立という主要事実が主張されている以上、その具体的態様が直接か代理人によるものかは、認定の範囲内に含まれる。したがって、代理人Dによる代物弁済予約の成立を認めた原審の判断に弁論主義違反はない。2. 第二審において適法な訴訟代理権を有する弁護士が、何ら異議を留めずに本案について弁論し、訴訟を継続させて判決を受けた事実は、先行する無権代理人による訴訟行為を有効なものとして受け入れる意思を表示したものといえる。ゆえに、従前の訴訟行為全部を追認したものと評価するのが相当である。
結論
1. 代理人による契約成立の認定は弁論主義に違反しない。2. 適法な代理人による本案弁論は、無権代理人の訴訟行為を追認したものと解され、訴訟手続の瑕疵は治癒される。
実務上の射程
弁論主義の適用範囲において、代理の事実は「主要事実」そのものではなく、契約成立という主要事実を導く法的構成の一部として扱われる点に注意が必要である。訴訟行為の追認については、手続の安定性の観点から、適法な代理人による事後の訴訟追行をもって広く包括的追認を認める実務の根拠となる。
事件番号: 昭和41(オ)706 / 裁判年月日: 昭和41年12月23日 / 結論: 棄却
第一審において真正な訴訟代理人のない者のした訴訟行為であつても、第二審における真正な訴訟代理人が本案について弁論をし訴訟を追行したときは、第一審における右訴訟代理権の欠缺は補正されたものというべきである。