建物を甲から乙、乙から丙、丙から丁、丁から戊が順次買受けて占有を承継し、甲以下の前主の占有を併せると、甲が占有を開始したときから二〇年を経過したときに戊のため取得時効が完成した旨の主張は、仮に乙と丙との間に占有承継人として別の者が介在することが証拠上認められるとするならば、その者の占有をも前記取得時効の期間として主張する趣旨を含むものと解するのが相当である。
取得時効における前主の占有と民訴法一八六条
民法162条,民法186条,民法187条,民訴法186条
判旨
取得時効の主張において、占有承継の原因となる売買等の特定の事実を主張している場合、証拠上その間に別の占有者が介在することが判明したときは、特段の事情のない限り、当該介在者の占有をも時効期間に含めて主張する趣旨を含むものと解すべきである。
問題の所在(論点)
取得時効の援用において、占有承継の経緯として特定の人物間の承継を主張している場合、裁判所がその間に主張のない第三者の占有を認定することは弁論主義に反するか。主張の合理的な解釈が問題となる。
規範
民事訴訟における弁論主義の適用に関し、主要事実の主張の解釈としては、当事者が特定の承継関係を主張している場合であっても、真実の承継過程に介在者が存在するならば、その主張は当該介在者の占有をも包含して援用する趣旨を含むと合理的に解釈すべきである。
重要事実
被上告人(被告)Bは、建物の占有に関し、E→D→F→G→Bという順次売買による占有承継を主張し、Eの占有開始から20年が経過したことにより取得時効(民法162条1項)が完成したと抗弁した。しかし、証拠によればDとFの間に氏名不詳の介在者が存在することが判明したため、上告人(原告)は、Bが主張していない事実(介在者の存在)を原審が認定したのは弁論主義(民訴法186条、現147条等)に反すると主張した。
あてはめ
BはE以下の前主の占有を併せて取得時効が完成した旨を主張している。この主張の趣旨を合理的に解釈すれば、仮に証拠上、主張された承継人間に別の占有者が介在することが認められる場合には、その介在者の占有期間をも含めて時効期間として主張する趣旨が含まれていると解するのが相当である。したがって、原審がDとFの間に氏名不詳者の占有承継を認めたことは、当事者の主張の範囲内にあるといえる。
結論
弁論主義に違反しない。当事者の主張には、客観的に判明した占有承継人の占有を併せて主張する趣旨が含まれると解釈されるため、原審の認定は正当である。
実務上の射程
司法試験等の答案においては、時効の占有承継(民法187条1項)に関する主張整理において活用できる。特定の売買関係等の主張と証拠上の認定がわずかに齟齬する場合でも、時効完成という主要事実の範囲内で主張の合理的な解釈を認めることで、不意打ちにならない限り弁論主義違反を回避できるとする射程を有する。
事件番号: 昭和39(オ)1034 / 裁判年月日: 昭和40年7月16日 / 結論: 棄却
弁護士甲が第一審において乙の適法な訴訟代理権を有しなかつたとしても、控訴人乙から適法な委任を受けた弁護士丙が控訴審において乙の訴訟代理人として当該訴訟の本案について弁論をし、訴訟を進行し、判決を受けたときは、丙は甲の従前の訴訟行為全部を追認したものというべきである。