農地賃貸人に自作の意思があると認めた知事の認定に誤りがあつたとしても、賃借人が解約承諾書に捺印している事実その他原審認定の事実関係のもとでは、知事の本件農地賃貸借解約の許可処分に明白な瑕疵があるとはいえず、これを無効とすべき理由はない。
農地賃貸借解約の許可処分が有効とされた事例。
農地法20条
判旨
行政処分における事実認定に誤りがあったとしても、それが直ちに処分の無効事由となるわけではなく、特段の事情がない限り、処分の瑕疵が客観的に明白であるといえない場合には、当該処分は無効とはならない。
問題の所在(論点)
行政庁が許可処分の前提となる事実(自作の意思の有無)の認定を誤った場合、当該処分は当然無効となるか。
規範
行政処分の無効事由は、当該処分に重大かつ明白な瑕疵がある場合に限られる。事実認定の誤りについては、単に内容が真実に反する可能性があるというだけでは足りず、処分当時に存在する諸客観的資料等に照らし、その瑕疵が何人にも一見して明白であることを要する。
重要事実
農地の賃貸借解約について農地法に基づく許可処分がなされたが、賃借人(上告人)は、賃主(D)に真実の自作意思がなかったため許可要件を欠き、処分は無効であると主張した。事実関係として、賃主の内心の意図は外部に明確に表示されていなかった一方で、賃借人は既に解約承諾書に捺印しており、行政庁はこれらの状況に基づき自作の意思があると認定して許可を行っていた。
事件番号: 昭和30(オ)674 / 裁判年月日: 昭和31年4月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の決定日時の表示に誤りがあったとしても、実情調査等の必要な手続を経た上で行われたものであれば、直ちに当該処分を無効ならしめる瑕疵とはならない。 第1 事案の概要:上告人は、農地法に基づく許可申請を行ったが、被上告人(行政庁)により不許可処分を受けた。この不許可決定について、被上告人は村農業…
あてはめ
本件において、賃主の自作意思という内心の意図は外部から容易に判別できるものではない。一方で、賃借人が解約承諾書に捺印しているという客観的事実が存在しており、行政庁がこれらに基づいて自作意思があると認定したことは、当時の状況からして合理性がある。たとえ事後的にこの認定に誤りがあったとしても、処分当時に瑕疵が客観的に明白であったとはいえず、重大かつ明白な瑕疵がある場合には当たらない。したがって、処分の効力を否定すべき無効事由は認められない。
結論
行政処分の前提となる事実認定に誤りがあったとしても、その瑕疵が明白でない限り、当該処分は無効とはならない。
実務上の射程
行政処分の公定力と無効事由の限界に関する規範として活用できる。特に事実認定の誤りを理由に無効を主張する場合、客観的な資料から一見して誤りとわかるほどの「明白性」が要求されることを示す際に引用すべき判例である。
事件番号: 昭和30(オ)417 / 裁判年月日: 昭和31年4月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁が一度行った農地賃貸借解約許可処分は、当該許可に基づき解約の申入れがなされ、既に解約の効力が生じている場合には、私法上の形成効果が確定しているため、もはや行政庁においてこれを取り消すことはできない。 第1 事案の概要:上告人は農地法(旧農地調整法)に基づき、知事から農地賃貸借の解約許可を受け…
事件番号: 昭和36(オ)607 / 裁判年月日: 昭和37年2月15日 / 結論: 棄却
原審認定の事実関係のもとで地主主張の反別に相応する小作料を支払わず、それより狭い反別に相応する小作料を弁済供託したからといつて小作人の行為は、農地法第二〇条第二項一号の信義に反する行為にあたらない。
事件番号: 昭和36(オ)4 / 裁判年月日: 昭和37年7月17日 / 結論: 棄却
農地の売渡の相手方を誤つた違法があつても、売渡処分を当然無効とはいえない。
事件番号: 昭和36(オ)1320 / 裁判年月日: 昭和38年12月26日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】行政処分が当然無効となるための「瑕疵の明白性」は、処分の外形上客観的に、誤認が一見して看取できるか否かにより決すべきであり、行政庁の調査怠慢の有無は直接関係しない。 第1 事案の概要:行政庁が、被上告人の自作地である農地を小作地であると誤認し、農地買収処分を行った事案。原審は、本件農地が実際には自…