判旨
行政処分の決定日時の表示に誤りがあったとしても、実情調査等の必要な手続を経た上で行われたものであれば、直ちに当該処分を無効ならしめる瑕疵とはならない。
問題の所在(論点)
行政処分の通知における決定日附の表示の誤りが、当該行政処分を無効ならしめる程度の重大な瑕疵に当たるか。
規範
行政処分に形式的な瑕疵(日附の表示の誤り等)が存在する場合であっても、当該処分が実体的な調査手続を経て適正になされたと認められるときは、その瑕疵は処分の効力を否定すべき重大かつ明白なものとはいえず、無効原因にはならない。
重要事実
上告人は、農地法に基づく許可申請を行ったが、被上告人(行政庁)により不許可処分を受けた。この不許可決定について、被上告人は村農業委員会から申請書の進達を受けた後、実情調査を実施した上で処分を決定したが、その決定通知に記載された日附の表示に誤り(かし)があった。上告人は、この日附の瑕疵や行政手続の違法を理由に、処分の無効を主張して争った。
あてはめ
本件における不許可決定は、被上告人が村農業委員会から許可申請書の進達を受けた後、漫然となされたものではなく、現地の状況等について「実情調査」を適切に行った上でなされたものである。このような実体的な判断過程を経てなされた処分において、単に決定の日附の表示に誤りがあるに過ぎない場合は、処分の適法性や効力の根幹を揺るがすような重大な違法とは評価できない。したがって、当該瑕疵は処分を無効ならしめるものではないと解される。
結論
行政処分の決定日附の表示に瑕疵があっても、実情調査等の適正な手続を経てなされた以上、当該処分は無効ではない。
実務上の射程
事件番号: 昭和30(オ)417 / 裁判年月日: 昭和31年4月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政庁が一度行った農地賃貸借解約許可処分は、当該許可に基づき解約の申入れがなされ、既に解約の効力が生じている場合には、私法上の形成効果が確定しているため、もはや行政庁においてこれを取り消すことはできない。 第1 事案の概要:上告人は農地法(旧農地調整法)に基づき、知事から農地賃貸借の解約許可を受け…
行政手続の形式的瑕疵(表示の誤り等)と処分の効力の関係を扱う際の基準となる。特に無効確認訴訟において、瑕疵が「重大かつ明白」か否かを検討する際、実体的な調査手続の有無が治癒や有効性の維持に影響を与える要素として機能する。
事件番号: 昭和36(オ)1391 / 裁判年月日: 昭和38年4月30日 / 結論: 棄却
農地賃貸人に自作の意思があると認めた知事の認定に誤りがあつたとしても、賃借人が解約承諾書に捺印している事実その他原審認定の事実関係のもとでは、知事の本件農地賃貸借解約の許可処分に明白な瑕疵があるとはいえず、これを無効とすべき理由はない。
事件番号: 昭和36(オ)607 / 裁判年月日: 昭和37年2月15日 / 結論: 棄却
原審認定の事実関係のもとで地主主張の反別に相応する小作料を支払わず、それより狭い反別に相応する小作料を弁済供託したからといつて小作人の行為は、農地法第二〇条第二項一号の信義に反する行為にあたらない。
事件番号: 昭和36(オ)4 / 裁判年月日: 昭和37年7月17日 / 結論: 棄却
農地の売渡の相手方を誤つた違法があつても、売渡処分を当然無効とはいえない。
事件番号: 昭和30(オ)920 / 裁判年月日: 昭和31年12月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分が当然無効とされるためには、その瑕疵が重大であるだけでなく、かつ客観的に明白であることを要する。本件買収処分については、瑕疵が重大であっても明白とは認められないため、当然無効とはならない。 第1 事案の概要:自作農創設特別措置法に基づき、行政庁が本件農地の買収処分を行った。しかし、当該処分…