唯一の証拠方法についても、不定期間の障碍ある場合には、取調をしないことができる。
唯一の証拠取調と不定期間の障碍
民訴法260条
判旨
証拠調べに不定期間の障害があるときは、いわゆる唯一の証拠であっても、裁判所は証拠調べをすることなく判決をすることができる。
問題の所在(論点)
事実認定の鍵となる「唯一の証拠」の取り調べが困難な場合であっても、民事訴訟法182条(旧260条)に基づき、証拠調べを行わずに終局判決をすることが許されるか。
規範
証拠調べについて「不定期間の障碍(障害)」がある場合には、裁判所は証拠調べを要しない(旧民事訴訟法260条、現行法182条参照)。この規定は、事案を左右する唯一の証拠方法であっても同様に適用され、当該証拠の取り調べを待たずに判決をしても違法とはならない。
重要事実
本件における転貸承諾の事実に係る唯一の証人としてDが申請された。第一審において呼出状が送達されるも出頭せず、再度の呼出は「転居先不明」により不送達となったため採用が取り消された。控訴審でも証人取り調べのために弁論が再開され、新住所宛に呼出状を発送したが、再び「転居先不明」で返戻された。郵便集配手が数度にわたり調査を重ねたものの、所在を特定することができなかった。
事件番号: 昭和35(オ)318 / 裁判年月日: 昭和37年6月8日 / 結論: 棄却
土地の貸借関係が賃貸借か使用貸借であるかが争点である事件において、貸主が同一人である係争土地の隣地の貸借関係が賃貸借であるからといつて、その故に直ちに係争土地の貸借関係を賃貸借と認定すべきではない。
あてはめ
本件証人Dに対し、第一審・控訴審を通じて複数回にわたり呼出状を発送したが、いずれも不出頭または「転居先不明」による不送達となっている。特に控訴審では判明していた新住所へ送達を試み、郵便集配手による数度の調査も行われたが奏功していない。これらの事情を総合すれば、証人Dの取り調べには、いつ解消されるか不明な「不定期間の障害」があるといえる。したがって、たとえ唯一の証拠であっても、これ以上の証拠調べを待つ必要はないと解される。
結論
証拠調べに不定期間の障害がある場合には、唯一の証拠であっても取り調べを要しないため、原審が証人を取り調べなかったことに違法はない。
実務上の射程
裁判所による職権的な証拠採用の取り消しや、証拠調べ未了のままの結審を正当化する際の規範として機能する。司法試験等では、当事者の証拠申出に対する裁判所の訴訟指揮の適法性を論じる際、「唯一の証拠」の例外としての『不定期間の障害』の有無を検討する場面で活用できる。
事件番号: 昭和37(オ)205 / 裁判年月日: 昭和37年11月20日 / 結論: 棄却
反証として当事者本人尋問の申請があつた場合において、当該申請について尋問事項書が提出されず、当該本人が裁判所の指定した尋問期日に出頭せず、かつ、その不出頭についての正当の事由が疎明されなかつたときは、当該本人が唯一の証拠方法であつても、裁判所は、必ずしも、これを尋問することを要しない。