土地賃借権が共同相続された場合、その共同相続人の一人に対してなされた賃貸借解約の意思表示は、その効力がない。
共同相続人の一人に対する賃借解約の効力
民法544条1項
判旨
賃借人の死亡により賃借権が複数の相続人に承継された場合、賃貸人が賃料不払を理由に賃貸借契約を解除するには、民法544条1項に基づき、共同相続人全員に対して解除の意思表示をしなければならない。
問題の所在(論点)
賃借人の地位が共同相続された場合において、賃貸人が賃料不払に基づき解除を行う際、共同相続人の一人に対してのみなされた解除の意思表示は有効か。また、相続人の存在が解除後に判明した場合に結論が左右されるか。
規範
契約の当事者の一方が複数人ある場合、解除の意思表示は、その全員から、またはその全員に対してしなければならない(民法544条1項)。賃借権が相続により共同相続人に承継された場合も、賃借人側の当事者が複数になったものとして、この解除権不可分の原則が適用される。
重要事実
上告人A(賃貸人)は、D(賃借人)との間で土地賃貸借契約を締結していたが、Dの死亡により、その地位は被上告人B1ら計24名の相続人に共同相続された。その後、賃料不払が発生したため、Aは共同相続人の一人であるB1に対してのみ賃貸借契約解除の意思表示を行った。なお、Aが解除の意思表示をした時点では、共同相続人の存在は判明しておらず、相続登記も未了であったが、解除後にこれらが明らかになった。
あてはめ
本件土地賃貸借契約の賃借人たる地位は、Dの死亡によって被上告人B1を含む24名の共同相続人に承継されている。したがって、賃借人側の当事者は複数となっており、解除の意思表示は民法544条1項により共同相続人全員に対してなされる必要がある。本件において上告人AはB1に対してのみ意思表示を行っており、全員に対してなされたとはいえない。また、解除当時に相続人の存在が不明であったり、相続登記が未了であったりしたとしても、当事者が複数であるという客観的事実に変わりはなく、解除の効力を認める根拠にはならない。
結論
B1のみに対する解除の意思表示はその効力を生じない。したがって、賃貸借契約は適法に解除されておらず、解除を前提とする損害賠償請求も認められない。
実務上の射程
賃借人の地位が相続された場合における解除の不可分性を確認した判例である。実務上、相続人が多数いる場合の解除通知は困難を伴うが、法的には全員への通知を要する(連帯債務の規定による個別請求が可能な金銭債務としての賃料支払義務と、解除権の行使を区別する)。答案上は、相続による契約当事者の複数化を指摘し、直ちに544条1項を適用する流れで活用する。
事件番号: 昭和34(オ)777 / 裁判年月日: 昭和36年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】独立当事者参加訴訟(民訴法47条)において、原告、被告、参加人の三当事者間で権利関係を合一に確定する必要がある場合、原告が参加人の請求を認諾したとしても、被告がこれを争っている限り、その認諾は効力を生じない。 第1 事案の概要:原告Bが被告に対して訴えを提起し、さらに参加人が民事訴訟法71条(現4…
事件番号: 昭和36(オ)397 / 裁判年月日: 昭和39年2月25日 / 結論: 棄却
共有物を目的とする貸借契約の解除は、共有者によつてされる場合は、民法第二五二条本文にいう「共有物ノ管理ニ関スル事項」に該当すると解すべきであり、右解除については、民法第五四四条第一項の規定は適用されない。
事件番号: 昭和39(オ)1161 / 裁判年月日: 昭和43年5月28日 / 結論: 棄却
右の場合には、いわゆる固有必要的共同訴訟ではない。
事件番号: 昭和36(オ)646 / 裁判年月日: 昭和38年4月23日 / 結論: 棄却
第三者が賃借土地の上に存する建物の所有権を取得した場合に、賃貸人が賃借権の譲渡を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法一〇条に基づく第三者の建物買取請求権はこれによつて消滅するものと解するのを相当とする。