上告理由として原審に提出した準備書面を引用するというだけの部分は、適式な上告理由書とならない。(昭和二八年一一月一一日大法廷判決、民集七巻一一号一一九三頁参照)
上告理由書に原審で提出した準備書面を引用することの適否
民訴法398条,民訴規則49条
判旨
不動産の登記原因が「売買」と記載されている場合でも、反対の事情が認められる限り、実際の原因が「贈与」であると認定することは許容され、登記の権利推認力は反証によって覆される。
問題の所在(論点)
登記簿上に記載された登記原因(売買)と異なる実体法上の原因(贈与)を認定することが、登記の推認力に反し許されないのではないか。
規範
不動産の登記には、記載された登記原因通りの権利変動があったことを推認させる効力(権利推認力)が認められる。しかし、これは法的擬制ではなく事実上の推認に留まるため、証拠によって登記原因と異なる事実関係が立証された場合には、その推認は破られる。
重要事実
上告人(売主・贈与者)から被上告人(買主・受贈者)に対し、本件不動産の所有権移転登記がなされた。その登記上の原因は「売買」と記載されていたが、実際には贈与契約に基づいて当該登記が行われていた。第一審および原審は、証拠に基づき、売買名義の登記は実態として贈与に基づくものであると認定した。
事件番号: 昭和33(オ)736 / 裁判年月日: 昭和35年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】所有権移転登記請求訴訟において、登記原因を贈与から売買や代物弁済に変更することは、所有権に基づく請求という同一の訴訟物に関する主張の変更にすぎず、請求の変更(民訴法143条)には当たらない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、本件山林の所有権移転登記を求めて提訴した。当初は登記原因を「贈与」と…
あてはめ
登記の記載によれば、反対の事情がない限り、売買により所有権が移転したと推認すべきである。しかし、本件では証拠に基づき、上告人と被上告人の間に贈与契約が締結され、その履行として本件登記がなされたという事実が認められる。このように、登記原因が真実ではないことを示す「反対の事情」が認められる以上、登記上の記載に拘束されることなく、実態に即して贈与による所有権移転を認定することができる。
結論
登記原因が「売買」であっても、贈与の事実が認められる場合には、その実体関係を基礎として判決を下すことは適法であり、上告は棄却される。
実務上の射程
登記の推認力の限界を示す事案。答案上では、不動産の所有権帰属が争われる際、登記の存在から即座に「売買の成立」を確定させるのではなく、実体関係の存否(本件では贈与の成否)を個別に検討し、登記名義と実態が異なる場合には実態を優先させるという論法で使用する。
事件番号: 昭和35(オ)406 / 裁判年月日: 昭和37年3月23日 / 結論: 棄却
証人らが訴訟当事者の一方の妻あるいは妻の兄の関係にあるとしても、その一事によつて右証人らが証人能力を有しないとか、証言の証拠価値が薄弱であるとかは断定できない。
事件番号: 昭和26(オ)646 / 裁判年月日: 昭和29年1月28日 / 結論: 棄却
仮装の売買契約に基き不動産の所有権移転登記を受けた者が、その後真実の売買契約によりその所有権を取得し、右登記が現在の実体的権利状態と合致するに至つたときは、その時以後、買主は右所有権の取得を第三者に対抗することができる。
事件番号: 昭和36(オ)760 / 裁判年月日: 昭和38年10月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】表示行為に対応する真意がないことを表意者が自覚しながら行う心裡留保(民法93条)の成否について、表意者が登記名義の移転や付随する契約の締結を十分承認して行っていた場合には、有効な贈与の成立を認めることはできない。 第1 事案の概要:上告人は、被上告人から本件建物の贈与を受けたと主張し、所有権移転の…
事件番号: 昭和33(オ)26 / 裁判年月日: 昭和34年7月2日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】売買の予約の成立を認めるためには、その前提となる事実について証拠に基づき合理的に認定する必要があり、供述内容が予約ではなく本契約の成立を指している場合には、予約の成立を認めることはできない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)が上告人(被告)から土地200坪を単価140円で購入したと主張し、売買一…