仮装の売買契約に基き不動産の所有権移転登記を受けた者が、その後真実の売買契約によりその所有権を取得し、右登記が現在の実体的権利状態と合致するに至つたときは、その時以後、買主は右所有権の取得を第三者に対抗することができる。
仮装の売買契約に基き所有権移転登記を受けた者がその後、真実の売買契約により所有権を取得した場合とその登記の対抗力
民法177条
判旨
当初は実体的権利関係を欠く無効な登記であっても、その後に実体的な権利取得がなされれば、その時点から現在の権利状態と合致する有効な登記として対抗力を有する。
問題の所在(論点)
登記当時に実体的権利関係を欠いていた無効な登記が、その後に実体的な権利関係を取得した場合に、民法177条の対抗力を有する有効な登記として治癒されるか。
規範
登記の有効性は、登記が実体的な権利関係と合致しているか否かによって判断される。当初は無効な登記であっても、後に実体的な権利関係が備わった場合には、その時以後、当該登記は実体的権利状態と合致するに至ったものとして、第三者に対抗し得る有効な登記となる。
重要事実
1. 被上告人Bは、昭和22年3月3日、虚偽の売買契約に基づき本件不動産の所有権移転登記を具備した。2. その後、昭和23年2月18日、BはDから本件不動産を真実有効に買い受け、実際に所有権を取得した。3. 上告人は、Bの登記が当初無効であったことを理由に、Bが所有権の取得を対抗できないと主張して争った。
事件番号: 昭和36(オ)1026 / 裁判年月日: 昭和37年4月27日 / 結論: 棄却
上告理由として原審に提出した準備書面を引用するというだけの部分は、適式な上告理由書とならない。(昭和二八年一一月一一日大法廷判決、民集七巻一一号一一九三頁参照)
あてはめ
1. 昭和22年の所有権移転登記は、仮装の売買契約に基づくものであり、登記時点では実体的権利関係を欠くため無効であった。2. しかし、Bは昭和23年2月18日に真実の譲渡を受けて所有権を取得しており、この時点において、それまで存在していた登記の内容と現在の実体的な権利関係が完全に合致するに至った。3. したがって、当該権利取得の時以後、登記は現在の権利状態を正しく公示するものとして効力を生じる。
結論
Bは、実体的な権利を取得した時以後、本件登記をもって所有権の取得を第三者に対抗することができる。したがって、上告人の主張は理由がない。
実務上の射程
「無効な登記の流用」に関する基本的な判断枠組みを示すものである。登記が実体関係に合致していれば、その経緯がどうあれ公示としての機能を果たすという実体重視の考え方を採用している。答案上は、先行する登記が後に発生した権利関係を公示していると言えるか、という文脈で活用すべき法理である。
事件番号: 昭和36(オ)416 / 裁判年月日: 昭和36年12月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の登記手続において、保証書等の申請書類に瑕疵があったとしても、ひとたび登記がなされた以上、その登記が実体的な権利関係に合致する限り、当該登記は有効である。 第1 事案の概要:被上告人Bは、本件不動産を売買によって取得した所有権者であった。しかし、当該不動産の登記申請に際して、保証書による申請…
事件番号: 昭和33(オ)736 / 裁判年月日: 昭和35年2月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】所有権移転登記請求訴訟において、登記原因を贈与から売買や代物弁済に変更することは、所有権に基づく請求という同一の訴訟物に関する主張の変更にすぎず、請求の変更(民訴法143条)には当たらない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、本件山林の所有権移転登記を求めて提訴した。当初は登記原因を「贈与」と…
事件番号: 昭和23(オ)169 / 裁判年月日: 昭和25年11月16日 / 結論: 棄却
信託法第三条は、信託の趣旨をもつて財産権を譲渡した場合においても信託の登記又は登録をしなければ、その譲渡の信託なることをもつて第三者に対抗することができない旨を定めたに止まり、譲渡の登記があるにかかわらず、その譲渡までも対抗できない趣旨を定めたものではない。