判旨
所有権移転登記請求訴訟において、登記原因を贈与から売買や代物弁済に変更することは、所有権に基づく請求という同一の訴訟物に関する主張の変更にすぎず、請求の変更(民訴法143条)には当たらない。
問題の所在(論点)
所有権移転登記請求において登記原因となる法律事実を変更することが、民事訴訟法上の「請求の変更」に該当するか。また、変更に際して相手方が異議なく応訴した場合の効果が問われた。
規範
所有権移転登記手続を求める訴えにおいて、その原因として主張される実体上の権利発生原因(贈与、売買、代物弁済等)の変更は、請求の趣旨および請求の原因自体を変更するものとはいえない。また、仮に請求の変更に該当するとしても、相手方が異議を述べずに本案について弁論した場合には、変更の効力を争うことはできない。
重要事実
被上告人(原告)は、本件山林の所有権移転登記を求めて提訴した。当初は登記原因を「贈与」と主張していたが、その後に「売買」へ、最終的には「代物弁済」へと主張を訂正した。これに対し上告人(被告)は、異議を述べることなく直ちに応訴し、代物弁済の事実を否認するなど本案の認否を行っていた。上告人は、このような原因の変更は理由不備や手続違背であるとして上告した。
あてはめ
本件において、被上告人が請求の原因を「贈与」から「売買」を経て「代物弁済」へと変更した点について検討する。所有権移転登記手続を求める訴訟の本質は、所有権に基づく登記請求権の存否である。したがって、その発生原因である具体的法律事実がいずれであっても、同一の登記請求権を主張していることに変わりはない。ゆえに、本件の変更は請求の変更には当たらない。また、事案の経緯を見れば、上告人は当該変更に対して異議を述べずに弁論を継続しており、手続上の瑕疵を主張することは許されない。
結論
登記原因の訂正は請求の変更に当たらず、原審の判断に違法はない。したがって、本件上告を棄却する。
事件番号: 昭和36(オ)1026 / 裁判年月日: 昭和37年4月27日 / 結論: 棄却
上告理由として原審に提出した準備書面を引用するというだけの部分は、適式な上告理由書とならない。(昭和二八年一一月一一日大法廷判決、民集七巻一一号一一九三頁参照)
実務上の射程
旧訴訟物理論の立場からは、登記原因(売買・贈与等)が異なっても「登記請求権」という訴訟物は同一であると解されるため、その変更は「攻撃防御方法の変更」にすぎない。実務上、訴訟の途中で登記原因を構成し直す際の根拠として機能する。また、相手方の異議なき応訴による瑕疵の治癒(民訴法143条4項準用)という手続法上の基本原則を確認する際にも引用可能である。
事件番号: 昭和33(オ)26 / 裁判年月日: 昭和34年7月2日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】売買の予約の成立を認めるためには、その前提となる事実について証拠に基づき合理的に認定する必要があり、供述内容が予約ではなく本契約の成立を指している場合には、予約の成立を認めることはできない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)が上告人(被告)から土地200坪を単価140円で購入したと主張し、売買一…
事件番号: 昭和33(オ)71 / 裁判年月日: 昭和35年3月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債務者が債権証書を保持していない場合であっても、他の証拠を総合して弁済の事実を認定できるのであれば、特段の違法はない。また、特定の事実が存在しても、当然に占有者が「所有の意思」を有していると認定されるわけではない。 第1 事案の概要:本件において、上告人は債務が既に弁済されていると主張したが、債権…
事件番号: 昭和33(オ)718 / 裁判年月日: 昭和36年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が主張していない契約条件(代金決済方法等)を認定して売買契約の効力を認めることは、当事者の主張・立証の範囲内であれば弁論主義に反しない。また、特定の買戻し合意や代金決済合意を含む売買契約であっても、直ちに公序良俗に反して無効となるものではない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は上告人(被…
事件番号: 昭和33(オ)554 / 裁判年月日: 昭和36年8月17日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】独立当事者参加訴訟において、一当事者が証書の成立を認める自白をしても、参加人がこれを争う以上、当該自白の効力は参加人には及ばず、二段の推定(民訴法228条4項)も適用されない。 第1 事案の概要:不動産所有権移転登記手続請求事件の控訴審において、第三者Aが民訴法47条に基づき独立当事者参加した。本…