抵当権者不知の間に不法に抹消された抵当権設定登記の回復登記について、登記上利害関係を有する第三者は承諾を拒みえない。
回復登記と利害関係者の承諾許否
民法177条,不動産登記法1条,不動産登記法67条
判旨
抵当権設定登記が抵当権者の不知の間に不法に抹消された場合、登記上の利害関係を有する第三者は、その善意・悪意を問わず、抵当権者の回復登記手続に必要な承諾を拒むことができない。
問題の所在(論点)
抵当権設定登記が不法に抹消された後、新たに登記上の利害関係を有するに至った第三者がいる場合、当該第三者は回復登記を承諾すべき義務を負うか。また、その承諾義務の有無について、当該第三者の善意・悪意が影響するか。
規範
不動産登記法上、不法に抹消された登記の回復登記を申請する際、登記上の利害関係を有する第三者が存在する場合、その者の承諾が必要となる(現行法68条等参照)。この点、抵当権者の不知の間に不法に抹消された抵当権については、物権法上の優先弁済権が当然に維持されるべきであり、登記上の利害関係を有する第三者は、自身の善意・悪意にかかわらず、その回復登記手続に必要な承諾を拒むことができない。
重要事実
抵当権設定登記がなされていた不動産について、抵当権者が知らない間にその登記が不法に抹消された。その後、当該不動産について、新たに登記上の利害関係を有するに至った第三者が現れた。抵当権者は、抹消された抵当権の回復登記手続を求めたが、当該第三者が回復登記に対する承諾義務の有無を争った。
あてはめ
本件では、抵当権者の不知の間に抵当権設定登記が不法に抹消されている。登記は権利の発生要件ではなく対抗要件に過ぎないため、不法な抹消によって実体法上の抵当権が消滅することはない。したがって、後から登記上の利害関係を有することになった第三者は、不完全な公示を基礎として登場した者に過ぎず、真実の権利者である抵当権者の回復を妨げる正当な理由を持たない。この承諾義務は実体法上の優先関係に基づくものであるため、第三者が不法抹消の事実について善意であるか悪意であるかは結論を左右しないといえる。
結論
第三者は、善意・悪意を問わず、抵当権者のする回復登記手続に必要な承諾を拒むことはできない。
実務上の射程
登記の公信力が否定されているわが国において、不法抹消された登記の回復を求める事案の基本判例である。答案上では、不動産登記法上の『承諾』が必要な場面において、実体法上の権利関係に基づき承諾義務を肯定する論拠として用いる。第三者が善意であっても保護されない(94条2項等の類推適用が認められる特段の事情がない限り)という原則を確認する際に重要である。
事件番号: 昭和38(オ)1273 / 裁判年月日: 昭和39年7月10日 / 結論: 棄却
民訴法第六四五条第二項により執行記録に添付された強制競売の申立が、右申立人不知の間に偽造の取下書が提出されたため取り下げられたものとして取り扱われ、右目的不動産に対する競売手続開始決定が同法第六五六条第二項により取り消されて強制競売申立の記入登記が抹消されたときでも、登記上利害の関係のある第三者は、前記申立人のする回復…
事件番号: 昭和35(オ)1470 / 裁判年月日: 昭和38年1月22日 / 結論: 棄却
右登記を無効として抹消を求めることはできない。(昭和三〇年(オ)第六三二号同三三年五月九日第二小法廷判決、民集一二巻九八九頁参照)。
事件番号: 昭和28(オ)254 / 裁判年月日: 昭和30年6月28日 / 結論: 破棄差戻
甲のため乙所有の建物についてなされた所有権移転請求権保全の仮登記が不法に抹消された後、善意無過失で、右建物につき、丙が乙より所有権の移転を受け、丁が丙より抵当権の設定を受けて、夫々その登記を経た場合、丙および丁は、右の抹消登記の回復登記により実質上不測の損害を受けないと認められるか、またはその損害が甲の損害と比べて顧慮…