一 登記は物権の対抗力発生の要件であつて、この対抗力は法律上消滅事由の発生しないかぎり消滅するものではない。 二 抵当権設定登記が抵当権者不知の間に不法に抹消された場合には、登記上利害の関係を有する第三者は、抵当権者のする回復登記手続に必要な承諾を拒むことはできない。
一 登記は対抗力の存続の要件か。 二 不法に抹消された抵当権設定登記の回復登記と登記上利害の関係を有する第三者の承諾義務。
不動産登記法67条
判旨
抵当権設定登記が抵当権者の不知の間に不法に抹消された場合、抵当権者は対抗力を喪失しない。そのため、登記上利害関係を有する第三者は、実体関係に符合させるための回復登記手続について承諾を与える義務を負う。
問題の所在(論点)
登記が不法に抹消された場合に、権利者は対抗力を喪失するか。また、不法抹消後の利害関係人は不動産登記法上の「登記上の利害関係を有する第三者」として回復登記の承諾を拒めるか。
規範
登記は物権の対抗力発生の要件であり、法律上の消滅事由が発生しない限りその効力は消滅しない。したがって、不法に抹消された登記に係る権利者は依然として対抗力を有しており、登記上の利害関係人は、実体上の損失を被るわけではないため、回復登記手続への承諾を拒むことができない。
重要事実
抵当権者が知らない間に、当該物件に設定されていた抵当権設定登記が不法に抹消された。その後、当該不動産について登記上の利害関係を有するに至った第三者(上告人)に対し、抵当権者が回復登記手続への承諾を求めた事案である。第三者側は、回復登記によって不測の損害を受けるか否かにより承諾義務を決すべきであると主張して争った。
事件番号: 昭和35(オ)865 / 裁判年月日: 昭和37年4月20日 / 結論: 棄却
抵当権者不知の間に不法に抹消された抵当権設定登記の回復登記について、登記上利害関係を有する第三者は承諾を拒みえない。
あてはめ
本件では抵当権設定登記が不法に抹消されているが、法的な消滅事由がない以上、抵当権者は対抗力を喪失していない。第三者は、回復登記の有無にかかわらず、当初から不法抹消された抵当権の対抗力を否認できない立場にある。したがって、回復登記がなされても第三者が実体上の損失を被ることはなく、実体関係に符合させるための手続を拒む正当な理由はないといえる。
結論
不法に抹消された抵当権の回復登記につき、登記上の利害関係を有する第三者は承諾義務を負う。
実務上の射程
登記の公信力が否定される現行法下において、不法抹消による対抗力不消滅の原則を明示したものである。答案上は、登記の不法抹消と第三者の出現が問題となる場面で、回復登記の承諾請求権(不動産登記法68条等)の根拠として活用する。
事件番号: 昭和38(オ)1273 / 裁判年月日: 昭和39年7月10日 / 結論: 棄却
民訴法第六四五条第二項により執行記録に添付された強制競売の申立が、右申立人不知の間に偽造の取下書が提出されたため取り下げられたものとして取り扱われ、右目的不動産に対する競売手続開始決定が同法第六五六条第二項により取り消されて強制競売申立の記入登記が抹消されたときでも、登記上利害の関係のある第三者は、前記申立人のする回復…
事件番号: 昭和28(オ)254 / 裁判年月日: 昭和30年6月28日 / 結論: 破棄差戻
甲のため乙所有の建物についてなされた所有権移転請求権保全の仮登記が不法に抹消された後、善意無過失で、右建物につき、丙が乙より所有権の移転を受け、丁が丙より抵当権の設定を受けて、夫々その登記を経た場合、丙および丁は、右の抹消登記の回復登記により実質上不測の損害を受けないと認められるか、またはその損害が甲の損害と比べて顧慮…