不動産売買契約が解除され、その所有権が売主に復帰した場合、売主はその旨の登記を経由しなければ、たまたま右不動産に予告登記がなされていても、契約解除後に買主から不動産を取得した第三者に対し所有権の取得を対抗できない。
予告登記の存在と民法第一七七条。
民法177条,民法545条,不動産登記法3条,不動産登記法34条
判旨
不動産の売買契約が解除され所有権が売主に復帰した場合、売主は登記を了しなければ、解除後に当該不動産を取得した第三者に対して所有権の復帰を対抗できない。この際、第三者の善意・悪意や、予告登記の有無は対抗要件の要否に影響しない。
問題の所在(論点)
不動産売買契約の解除により所有権が売主に復帰した場合、解除後に当該不動産を取得した第三者に対し、売主は登記なくして所有権を対抗できるか。また、第三者の主観(善意・悪意)や予告登記の有無がその結論に影響を及ぼすか(民法177条の適用の有無)。
規範
民法177条の「第三者」とは、当事者もしくはその承継人以外の者であって、不動産に関する物権の得喪変更の登記の欠缺を主張するにつき正当な利益を有する者をいう。契約解除による物権の復帰は、解除によって権利を失う者から第三者へ権利が移転したのと同様の公示の必要性が認められるため、対抗関係として処理すべきである。また、同条の「第三者」に含まれるために善意であることは要しない。
重要事実
不動産売買契約に基づき、買主のために所有権移転登記がなされた。その後、当該売買契約が解除され、所有権は法理上売主に復帰した。しかし、売主がその復帰の登記を備える前に、買主から当該不動産を譲り受けた(あるいは権利を取得した)第三者が現れた。上告人は、第三者が悪意である場合や予告登記がある場合には、登記なくして対抗できると主張して争った。
あてはめ
本件において、売買契約の解除による所有権の復帰は一つの物権変動と捉えられる。解除後の第三者は、解除によって権利を回復した売主と、解除前の所有者たる買主を起点とする二重譲渡に類似した対抗関係に立つ。民法177条の原則に照らせば、この対抗関係の優劣は登記の具備によって決せられるべきである。したがって、第三者が悪意であったとしても、あるいは予告登記がなされていたとしても、正当な権原に基づき利害関係を有した以上、売主は登記がない限り自己の権利を優先させることはできない。
結論
売主は、解除による所有権復帰の登記を了しなければ、解除後の第三者に対して所有権を対抗できない。第三者の悪意や予告登記の存在は、この対抗要件の原則を妨げるものではない。
実務上の射程
解除後の第三者との関係を対抗問題として処理する確立した判例である(「解除前」の第三者との関係を定める民法545条1項但書とは適用場面が異なる点に注意)。答案上は、解除によって復帰的物権変動が生じ、解除者と解除後の第三者が二重譲渡類似の対抗関係に立つことを示し、177条により決すると論じる際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和37(オ)1432 / 裁判年月日: 昭和38年8月30日 / 結論: 棄却
被上告人に引換給付を命じた理由の不当を主張して原判決を非難することは、上告人にとつて利益がなく、上告理由となし難い。
事件番号: 昭和33(オ)1128 / 裁判年月日: 昭和36年11月24日 / 結論: 棄却
甲が乙から宅地を買受けその旨の所有権取得登記を経由したのち、乙の債務不履行を原因として右売買契約が解除された場合には、甲は乙に対し右登記の抹消登記手続を求めることができる。
事件番号: 昭和39(オ)231 / 裁判年月日: 昭和40年2月23日 / 結論: 棄却
処分禁止の仮処分の登記後に仮処分債務者から第三者に対し所有権の移転登記がされた場合において、仮処分債権者は、債務者との本案訴訟において実体法上の権利の存することを確定しないかぎり、単に仮処分債権者たる地位に基づいて、右第三者に対し、右実体法上の権利を主張して、前記所有権の移転登記の抹消登記を請求することはできない。
事件番号: 昭和27(オ)128 / 裁判年月日: 昭和32年9月19日 / 結論: 棄却
一 真正の相続人が家督相続の回復をしない限り、真正相続人以外の第三者は、個々の特定財産についても、表見家督相続人に対し、相続の無効を理由として、その承継取得の効力を争うことはできない。 二 表見相続人が被相続人の子であるものとしてなされた家督相続につき相続の無効を主張できない者は、被相続人の妻が表見相続人の母(親権者)…