被上告人に引換給付を命じた理由の不当を主張して原判決を非難することは、上告人にとつて利益がなく、上告理由となし難い。
上告の利益がないとされた事例。
民訴法393条,民訴法394条
判旨
民法545条1項ただし書の「第三者」とは、解除された契約から生じた法律効果を基礎として、解除前に新たな権利を取得した者をいう。単に買主へ代金を貸し付けた者の妻が、勝手に自己名義の登記を経由したにすぎない場合は、同条項の「第三者」には該当しない。
問題の所在(論点)
売買契約の当事者ではない者が、買主に対する金銭貸与関係に乗じて無断で自己名義の登記を経由した場合、民法545条1項ただし書の「第三者」として保護されるか。
規範
民法545条1項ただし書にいう「第三者」とは、解除された契約から生じた法律関係を基礎として、解除前に新たな独立した権利を取得した者を指す。
重要事実
売主(被上告人)は、買主Dとの間で本件宅地建物の売買契約を締結した。Dは、その代金の一部(8万円)を上告人の夫Fから借り受けて支払った。その後、上告人は自ら本件不動産を買い受けた事実がないにもかかわらず、勝手に自己名義への所有権移転登記を経由した。売主とDとの間の売買契約が解除された際、上告人は、自身が同条項の「第三者」にあたるとして、登記の抹消義務を争った。
あてはめ
上告人は、本件宅地建物の買主(D)ではなく、単に代金貸与者の妻という立場にすぎない。また、上告人は売主とDとの間の売買契約から生じた法律効果を基礎として、適法に新たな権利を取得したものではなく、勝手に登記を経由したにすぎない。したがって、解除によって権利を害されることのないよう保護されるべき正当な利害関係を有する「第三者」とは認められない。
結論
上告人は民法545条1項ただし書の「第三者」に該当せず、売主に対する登記抹消義務を免れない。
実務上の射程
契約解除における「第三者」の定義を、解除された契約を基礎とする「新たな権利の取得」という観点から示した。実務上、不法占拠者や無権限の登記名義人など、正当な取引関係に基づかない者は本条の保護対象外であることを論証する際に用いる。対抗要件(登記)の具備が保護要件とされるのが通説だが、そもそも「新たな権利取得」という実体的な関係が前提となることを強調する判例である。
事件番号: 昭和40(オ)1016 / 裁判年月日: 昭和42年6月30日 / 結論: その他
甲が乙との間で自己所有の建物につき代物弁済の予約を締結し、乙が右予約に基づく完結権を行使したが、その所有権移転登記前に右完結の意思表示を撤回し、しかる後関係書類を利用して、右建物を自己名義に所有権移転登記を経由した場合には、乙から右建物を買受けてその旨の所有権移転登記を受けた丙および丙からこれを賃借した丁らは甲に対し右…
事件番号: 昭和36(オ)513 / 裁判年月日: 昭和36年12月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の二重譲受人等の第三者が民法177条の「第三者」に該当しないとされるためには、単に権利の存在を知っているだけでは足りず、相手方の登記の欠如を主張することが信義則(民法1条2項)に反すると認められるほどの強い「害意」を有する背信的悪意者であることを要する。 第1 事案の概要:上告人(被告)は本…
事件番号: 昭和35(オ)1470 / 裁判年月日: 昭和38年1月22日 / 結論: 棄却
右登記を無効として抹消を求めることはできない。(昭和三〇年(オ)第六三二号同三三年五月九日第二小法廷判決、民集一二巻九八九頁参照)。