民訴法第六四五条第二項により執行記録に添付された強制競売の申立が、右申立人不知の間に偽造の取下書が提出されたため取り下げられたものとして取り扱われ、右目的不動産に対する競売手続開始決定が同法第六五六条第二項により取り消されて強制競売申立の記入登記が抹消されたときでも、登記上利害の関係のある第三者は、前記申立人のする回復登記手続の承諾請求を拒むことはできない。
不法に抹消された強制競売申立の記入登記の回復登記と登記上利害の関係を有する第三者の承諾義務。
民訴法645条2項,不動産登記法67条
判旨
不法に抹消された強制競売の申立記入登記による差押えの効力は、法律上の消滅事由がない限り存続する。そのため、競売申立人は登記上の利害関係人に対し、回復登記手続への承諾請求が可能である。
問題の所在(論点)
競売申立の記入登記が不法に抹消された場合、差押えの効力は存続するか。また、競売申立人は登記上の利害関係人に対し、不動産登記法上の承諾請求権(現行法における承諾義務)を主張できるか。
規範
登記は物権の対抗力発生要件であり、法律上の消滅事由が発生しない限り、不法に抹消されてもその対抗力は消滅しない。強制競売手続開始決定に伴う差押えの効力についても同様であり、不法な取下げ操作等によって記入登記が抹消されたとしても、競売申立人との関係では差押えの効力は依然として存続する。
重要事実
不動産に対する強制競売の申立てがなされ、開始決定の記入登記により差押えの効力が生じていた。しかし、競売申立人の不知の間に、第三者によって不法に申立ての取下げがなされ、これを受けて執行裁判所が開始決定を取り消したため、記入登記が抹消された。その後、当該不動産について登記上の利害関係を有するに至った第三者が現れたため、競売申立人が回復登記への承諾を求めた。
事件番号: 昭和40(オ)573 / 裁判年月日: 昭和43年12月4日 / 結論: 棄却
仮登記が仮登記権利者不知の間に不法に抹消された場合には、登記上利害の関係を有する第三者は、その善意、悪意または回復登記により受ける損害の有無、程度にかかわらず、仮登記権利者の回復登記手続に必要な承諾を与えなければならない。
あてはめ
本件では、競売申立ての取下げが第三者による不法なものであり、申立人の意思に基づかない以上、法律上の有効な消滅事由とはいえない。したがって、差押えの効力は存続しているといえる。第三者は不法に抹消された登記により一見無負担の不動産に見えたとしても、実体法上は存続する差押えの効力を否認できない立場にある。回復登記はもともとあるべき実体関係を公示するにすぎず、第三者に実体上の損失を被らせるものではないため、当該第三者は回復登記を承諾すべき義務を負うと解される。
結論
競売申立人は、登記上の利害関係を有する第三者に対し、不法に抹消された記入登記の回復登記手続について承諾を請求することができる。
実務上の射程
登記の公信力が否定される法制下において、不法抹消された登記に係る実体上の権利(差押えの効力等)が存続することを前提とした、不動産登記法上の承諾請求の可否を論じる際に用いる。第三者の不測の損害よりも実体的な権利保護を優先する判例として位置づけられる。
事件番号: 昭和35(オ)865 / 裁判年月日: 昭和37年4月20日 / 結論: 棄却
抵当権者不知の間に不法に抹消された抵当権設定登記の回復登記について、登記上利害関係を有する第三者は承諾を拒みえない。
事件番号: 昭和28(オ)254 / 裁判年月日: 昭和30年6月28日 / 結論: 破棄差戻
甲のため乙所有の建物についてなされた所有権移転請求権保全の仮登記が不法に抹消された後、善意無過失で、右建物につき、丙が乙より所有権の移転を受け、丁が丙より抵当権の設定を受けて、夫々その登記を経た場合、丙および丁は、右の抹消登記の回復登記により実質上不測の損害を受けないと認められるか、またはその損害が甲の損害と比べて顧慮…