仮登記が仮登記権利者不知の間に不法に抹消された場合には、登記上利害の関係を有する第三者は、その善意、悪意または回復登記により受ける損害の有無、程度にかかわらず、仮登記権利者の回復登記手続に必要な承諾を与えなければならない。
不法に抹消された仮登記の回復登記と登記上利害の関係を有する第三者の承諾義務
不動産登記法2条,不動産登記法67条
判旨
仮登記が不法に抹消された場合、仮登記権利者は、その回復登記について登記上利害関係を有する第三者に対し、当該第三者の善意・悪意を問わず、承諾を請求することができる。また、遺言執行者がある場合には相続人は相続財産の処分権を有しないため、相続人による不法な仮登記抹消は回復の対象となる。
問題の所在(論点)
不法に抹消された仮登記の回復登記を請求できるか。また、その回復にあたり、仮登記後に権利を取得した第三者はその善意・悪意を問わず承諾義務を負うか(不動産登記法上の承諾請求の可否)。
規範
本登記が不法に抹消された場合、登記の対抗力は消滅しないため、権利者は回復登記手続について登記上利害関係のある第三者に承諾を請求できる。この法理は仮登記にも準用される。仮登記は実体法上の対抗力を有しないが、本登記の順位保全効を有し、その旨を公示・警告することを目的とするからである。したがって、仮登記の不法抹消時も回復登記は許され、利害関係を有する第三者は、自身の善意・悪意や損害の有無にかかわらず承諾を拒めない。
重要事実
亡F名義の仮登記があった本件土地について、Fの相続人Dが、遺言執行者が選任されていたにもかかわらず、Fの名を冒用して不法に当該仮登記を抹消させた。その後、上告人がDから本件土地の所有権を取得し、その旨の登記を具備した。これに対し、仮登記に基づき本登記をなすべき立場の者が、上告人に対して仮登記回復のための承諾を求めた事案である。
あてはめ
まず、本件仮登記の抹消は、遺言執行者が存在し、民法1013条により相続人Dに処分権がない状況下でなされた不法なものであるため、回復の対象となる。次に、仮登記は本登記の順位を保全する重要な効力を有しており、その不法な抹消は本登記の不法抹消と同様に扱うべきである。上告人は、仮登記抹消後に所有権登記を備えており、回復登記により直接不利益を受ける「登記上利害の関係を有する第三者」に該当する。したがって、仮登記の順位保全効を保護する観点から、上告人の主観的事情(善意・悪意等)にかかわらず、承諾義務を肯定すべきである。
結論
仮登記が不法に抹消された場合、権利者は第三者に対し回復登記への承諾を請求できる。本件の上告人は、不法抹消後に登記を得た利害関係人として、善意であっても承諾義務を免れない。
実務上の射程
仮登記の順位保全効を根拠に、不法抹消時の回復を認めた重要判例。本登記に関する法理を仮登記に及ぼした点、および第三者の善意・悪意を問わないとした点が実務・答案上のポイントとなる。
事件番号: 昭和28(オ)254 / 裁判年月日: 昭和30年6月28日 / 結論: 破棄差戻
甲のため乙所有の建物についてなされた所有権移転請求権保全の仮登記が不法に抹消された後、善意無過失で、右建物につき、丙が乙より所有権の移転を受け、丁が丙より抵当権の設定を受けて、夫々その登記を経た場合、丙および丁は、右の抹消登記の回復登記により実質上不測の損害を受けないと認められるか、またはその損害が甲の損害と比べて顧慮…
事件番号: 昭和43(オ)446 / 裁判年月日: 昭和43年10月8日 / 結論: 棄却
予告登記の存することの一事から、これに後行して係争不動産につき物権の得喪変更に関する法律行為を為した第三者が、当該登記原因の瑕疵につき悪意と推定されるべき筋合はない。
事件番号: 昭和35(オ)865 / 裁判年月日: 昭和37年4月20日 / 結論: 棄却
抵当権者不知の間に不法に抹消された抵当権設定登記の回復登記について、登記上利害関係を有する第三者は承諾を拒みえない。