先に登記を経由した抵当権者に対抗することができないために競売手続において抹消された所有権に関する仮登記の権利者は、仮登記の後に登記を経由した抵当権者に対して、不当利得を理由として、その者が交付を受けた代価の返還を請求することはできない。
競売手続において抹消された所有権に関する仮登記の権利者かち仮登記の後に登記を経由した抵当権者に対する代価の不当利得返還請求の可否
民法703条,競売法33条,民事執行法84条,民事執行法188条,不動産登記法105条1項,不動産登記法146条1項,仮登記担保契約に関する法律15条2項
判旨
不動産が競売され、先順位抵当権に対抗できず仮登記が抹消された場合、仮登記権利者は、その後に登記を経由した抵当権者が得た配当金について、不当利得返還を請求することはできない。
問題の所在(論点)
所有権に関する仮登記の権利者が、本登記未了の状態で、仮登記後に登記した抵当権者に対し、競売手続で交付された代価について不当利得(民法703条)を理由に返還請求できるか。仮登記の対抗力と優先弁済的効力の有無が問題となる。
規範
仮登記は本登記の順位を保全する効力を有するにとどまり、権利を第三者に対抗する力を持たない。仮登記権利者が仮登記のまま権利主張を認められるのは、不動産登記法等の定める特定の手続内に限られる。したがって、当該手続を離れて本登記を経由したのと同一の効力や法的利益の帰属を主張することは認められず、後順位の抵当権者に対して優先して配当を受ける権利も有しない。
重要事実
不動産所有者Dが、Eのため第1順位の抵当権を設定し登記した。その後、上告人がDから不動産を買い受け、所有権移転請求権仮登記を経由した。さらにその後、不動産は転売され、被上告人のために第2順位の根抵当権が設定・登記された。第1順位抵当権者Eによる競売の結果、被上告人が競落し、代金からEへの配当後の残額(約8143万円)が第2順位抵当権者である被上告人に配当された。上告人は、自己の仮登記が被上告人の根抵当権に優先するとして、当該配当金の返還を求めた。
あてはめ
上告人は所有権移転請求権の仮登記を有していたが、これは順位保全の効力を有するに過ぎない。競売手続において、仮登記が先順位抵当権(E)に対抗できないために抹消される場合、上告人は所有権を確定的に取得したのと同一の法的利益を対外的に主張できる立場にはない。したがって、配当手続において後順位抵当権者である被上告人に優先して代価を受領する権利はなく、被上告人が配当を受けたことは「法律上の原因」がないとはいえない。
結論
仮登記権利者は、仮登記後に登記した抵当権者に対し、不当利得返還請求をすることはできない。予備的請求を棄却した原審の判断は正当である。
実務上の射程
仮登記の効力を「順位保全」に厳格に限定し、本登記なくして実体法上の優先権を主張することを否定する。競売手続における仮登記権利者の保護は、本登記を具備するか、民事執行法上の手続等に従う必要があることを示唆している。答案上は、仮登記の効力や不当利得の「法律上の原因」の有無を論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和33(オ)23 / 裁判年月日: 昭和33年6月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】競売申立人が和解によって競売を終了させた際、最高価競買人の地位を侵害する意図等の特段の事情がない限り、不法行為上の故意・過失は認められない。 第1 事案の概要:上告人(原告)は不動産競売における最高価競買人であったが、競売申立人である被上告人(被告)が債務者側と和解したことにより、結果として上告人…