任意競売手続において配当異議訴訟が提起され、その確定判決に従つて配当がされた場合であつても、右訴訟の当事者は、相手方が債権または抵当権を有しないにもかかわらず右配当を受け、そのために自己が配当を受けられなかつたことを理由として、右相手方に対して不当利得の返還を求めることを妨げない。
任意競売手続における配当異議訴訟の確定判決に従つてされた配当と不当利得の成否
民法703条,民訴法634条,民訴法636条,民訴法697条,競売法33条2項
判旨
任意競売における配当異議訴訟の判決は、各抵当権の存否や順位を確定するものではない。したがって、配当異議訴訟の確定後であっても、配当を受けた債権者に対し不当利得返還請求を行うことは妨げられない。
問題の所在(論点)
配当異議訴訟の判決に、実体法上の権利関係(抵当権の存否や順位)を確定する既判力が認められるか。また、配当異議訴訟を経た後に、別途不当利得返還請求をすることが認められるか。
規範
配当異議訴訟の判決の効力は、配当手続内における配当額の調整に限定される。当該判決は、配当の基礎となった実体法上の権利関係(各抵当権の存否やその順位等)を確定する既判力を有しない。したがって、配当手続外において、実体法上の優先順位に基づき不当利得返還請求をすることは許容される。
重要事実
任意競売の手続において配当が行われたが、被上告人は上告人に対する配当異議訴訟の結果、本来得られるべき配当を得られなかった。被上告人は、上告人が法律上の原因なく配当を受けたとして、不当利得に基づき44万6797円の返還を求めて提訴した。これに対し上告人は、配当異議訴訟の結果によって権利関係は確定している旨を主張して争った。
事件番号: 昭和62(オ)1057 / 裁判年月日: 昭和63年7月1日 / 結論: 破棄自判
債権者が第三者所有の不動産の上に設定を受けた抵当権が不存在である.にもかかわらず、右抵当権の実行により第三者が不動産の所有権を喪失したときは、第三者は、売却代金から弁済金の交付を受けた右債権者に対し不当利得返還請求権を有する。
あてはめ
任意競売における配当異議訴訟の目的は、当該執行手続内における配当表の更正に留まる。判決文によれば、同訴訟の判決は各抵当権の存否や順位を実体的に確定するものではない。本件において、原審が認定した事実関係に基づけば、上告人が受領した配当金は実体法上の順位に反するものであり、被上告人に対する関係で「法律上の原因」を欠く。したがって、上告人は被上告人に対し不当利得返還義務を負うと解するのが正当である。
結論
配当異議訴訟の判決には実体法上の権利関係を確定する効力はないため、上告人は被上告人に対し、不当利得として配当金相当額を支払う義務がある。
実務上の射程
配当異議訴訟と不当利得返還請求の関係を整理する際に必須の判例である。答案上は、配当異議訴訟の既判力の範囲が「配当表の更正」に限定され、実体的な権利の存否には及ばないことを論じる際の根拠として用いる。民事執行法に基づく現行制度下でも、判例理論としてこの結論(不当利得返還請求の可否)は維持されている。
事件番号: 昭和47(オ)807 / 裁判年月日: 昭和48年7月12日 / 結論: 破棄差戻
抵当不動産の第三取得者が、民法三九一条にもとづく優先償還請求権を有しているにもかかわらず、抵当不動産の競売代金が抵当権者に交付されたため優先償還を受けられなかつたときは、右第三取得者は、抵当権者に対し不当利得返還請求権を有する。