滞納処分による売得金の充当処分が形式的に争いえなくなつても、国に対し優先権を有する抵当権者は、国に対し不当利得の返還請求をすることを妨げられない。
行政処分の形式的確定と不当利得。
民法703条
判旨
抵当不動産の譲受人が滞納した国税について、旧国税徴収法に基づき抵当権に優先して徴収し得る範囲は、設定者(前所有者)の滞納国税のうち一定期間内に納期の到来したものに限られる。国が優先権のない租税債務に公売代金を充当したことにより、本来配当を受けるべき抵当権者が弁済を受けられなかった場合、国に不当利得が成立する。
問題の所在(論点)
1. 抵当不動産の譲受人が滞納した国税が、譲渡前に設定された抵当権に優先する範囲(旧国税徴収法2条、3条の解釈)。 2. 優先権のない国税への充当処分がなされた場合において、国に不当利得返還義務が認められるか。
規範
1. 抵当不動産が譲渡された場合、旧国税徴収法3条により抵当債権に優先する国税は、抵当物件の差押時の所有者の滞納国税であって、抵当権設定者の設定前に納期が到来した国税、および設定後1年間に納期が到来した国税の額を限度とする。 2. 充当処分が行政処分として形式的に確定したとしても、実質的に公平に反する場合には不当利得の成立を妨げない。国が特定の財産から徴収し得ない税金を徴収したときは、国に不当利得が成立する。
重要事実
不動産の抵当権設定後、当該不動産が譲渡された。譲受人(新所有者)が国税等を滞納したため、国は当該不動産を公売処分に付した。国は公売代金を、抵当権に優先しないはずの譲受人の滞納国税等に充当・配分した。その結果、本来であれば公売代金から全額の弁済を受けることができたはずの第2順位抵当権者(被上告銀行)が配当を受けられなかった。そのため、抵当権者は国に対し、優先権のない充当分について不当利得返還請求を提起した。
あてはめ
1. 優先順位について:法3条の趣旨に照らせば、抵当権者は設定当時の所有者の滞納状況に基づき予測可能性を担保されるべきである。したがって、譲受人の滞納税のうち優先するのは、設定者(前所有者)基準で算定される一定範囲の税額に限られる。本件では、優先すべき租税合計は約20万円であり、公売代金150万円からこれを控除しても抵当債権を全額充足し得る。 2. 不当利得について:充当配分が行政処分であり形式的に争えなくなったとしても、それは実質的公平を是正する不当利得の成立を否定する理由にはならない。徴収し得ない税金を優先配分して利得を得た国は、実質的公平に反し、正当な理由なく抵当権者に損失を与えたといえる。
結論
国が抵当権に優先しない国税に公売代金を充当したことは、抵当権者に対する関係で不当利得となる。抵当権者の債権額が全額弁済されるべきであった以上、国は不当に得た利得を返還すべきである。
実務上の射程
租税債権と私法上の担保権の優先劣後関係(特に所有権移転後の滞納)に関する判断枠組みを示すものである。また、公定力のある行政処分であっても、それによって生じた実質的な不公平について不当利得返還請求が可能であることを明示した点に実務上の意義がある。答案上は、配当手続の瑕疵を民法上の不当利得で解決する際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和32(オ)1139 / 裁判年月日: 昭和35年4月5日 / 結論: 棄却
一 国有林野整備臨時措置法に基く国有山林の払下が、買受人としての法定の適格を欠く後順位の申請人に対する違法な売払処分であるとして、競願者が提起した当該払下処分取消訴訟は、民事訴訟用印紙法第二条にいう財産権上の請求に係る訴訟である。 二 右訴訟の訴状に貼用する印紙の額は、当該山林の価額を訴訟物の価額として算出すべきもので…