債権者が第三者所有の不動産の上に設定を受けた抵当権が不存在である.にもかかわらず、右抵当権の実行により第三者が不動産の所有権を喪失したときは、第三者は、売却代金から弁済金の交付を受けた右債権者に対し不当利得返還請求権を有する。
第三者所有の不動産に設定された抵当権が不存在であるにもかかわらず右抵当権の実行により債権者に対してされた弁済金の交付と不当利得の成否
民法703条,民事執行法84条,民事執行法184条,民事執行法188条
判旨
無効な根抵当権の実行により、不動産の所有者がその所有権を喪失した一方で、債権者が配当金を受領した場合、実体法上の受領権限を欠く当該債権者は、所有者に対し不当利得返還義務を負う。
問題の所在(論点)
無効な担保権の実行により、不動産の所有者が民事執行法上の公信力(旧法184条)によって所有権を喪失した際、配当を受けた債権者は、所有者に対して不当利得返還義務を負うか。利得者が債務者(債務消滅の利益)か債権者(配当金受領の利益)かが問題となる。
規範
債権者が第三者所有の不動産に対し、不存在の根抵当権を実行し、競売による買受人の代金納付によって第三者が所有権を喪失した場合、当該債権者は、売却代金から弁済金の交付を受ける実体法上の権利を有しない。したがって、債権者は法律上の原因なく第三者の財産から利益を受け、第三者に損失を及ぼしたものとして、民法703条に基づき不当利得返還義務を負う。
重要事実
債務者である訴外会社が、権限なくAの代理人と称してA所有の本件土地に根抵当権を設定した。その後、根抵当権者である被上告人が競売を申し立て、自ら本件土地を買い受け代金を納付したことで、Aの包括受遺者である上告人は土地の所有権を喪失した。被上告人は売却代金から約4123万円の配当を受け、被担保債権の弁済に充てたため、上告人が不当利得返還を求めた。
あてはめ
本件では、根抵当権設定契約は無権代理により締結されたものであり、実体法上は無効である。そのため、被上告人は本件土地の売却代金から弁済を受ける実体上の権利を欠いている。民事執行法上の規定により、買受人の代金納付に伴い上告人が土地所有権を喪失するという損失が発生した一方で、被上告人は実体上の権原なく弁済金相当額の交付を受けている。この利得と損失の間には因果関係が認められ、被上告人の利得に法律上の原因はないといえる。
結論
被上告人は法律上の原因なく上告人の財産から利益を受け、上告人に損失を及ぼしたといえるため、上告人の不当利得返還請求は認められる。
実務上の射程
執行法上の競売手続が有効に完結し、所有者が所有権を喪失する場合であっても、配当を受けた債権者と所有者との間の実体法上の不当利得返還請求は妨げられないことを示した。答案上は、担保権の不存在・無効により所有権を喪失した場面での救済手段として活用する。
事件番号: 昭和41(オ)657 / 裁判年月日: 昭和43年6月27日 / 結論: 棄却
任意競売手続において配当異議訴訟が提起され、その確定判決に従つて配当がされた場合であつても、右訴訟の当事者は、相手方が債権または抵当権を有しないにもかかわらず右配当を受け、そのために自己が配当を受けられなかつたことを理由として、右相手方に対して不当利得の返還を求めることを妨げない。
事件番号: 令和6(受)1067 / 裁判年月日: 令和7年6月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】別荘地の管理業務が、別荘地の基本的な機能や質を確保するために必要であり、未契約の所有者のみを利益享受から排除することが困難な性質を有する場合、当該所有者は、たとえ土地を利用しておらず管理業務を望んでいなかったとしても、法律上の原因なく利益を受け、管理者に損失を与えたものとして、不当利得返還義務を負…