債務者の受益者に対する代物弁済が債権者受益者間の詐害行為取消訴訟で取消されたとしても、その効力は訴訟の当事者間で相対的に及ぶだけであるから、右代物弁済による混同の結果消滅した受益者の債務者に対する抵当権が右詐害行為取消によつて復活することはない。
詐害行為取消の効力。
民法424条
判旨
詐害行為取消しの効力は、債権者と受益者または転得者との間で相対的に生じるにすぎず、債務者と受益者間の法律関係には影響を及ぼさない。したがって、代物弁済が詐害行為として取り消されても、債務者と受益者間では代物弁済により混同消滅した抵当権は当然には復活しない。
問題の所在(論点)
詐害行為取消判決が確定した場合、その取消しの効力は債務者と受益者との間にも及ぶのか。特に、代物弁済の取消しによって受益者が債務者に対して抵当権の復活を主張できるか(取消しの相対的効力の範囲)。
規範
詐害行為取消しの効力は、取消訴訟の当事者である債権者と、受益者または転得者との間の相対的な関係においてのみ、当該詐害行為を無効ならしめるものである。したがって、取消しの判決が確定しても、債務者と受益者、または受益者と転得者の間の法律関係には何ら影響を及ぼさない(相対的効力)。
重要事実
債務者Eは、受益者D(上告人らの先代)に対して本件家屋を代物弁済し、これによりDが有していた本件家屋への抵当権は混同(民法520条)によって消滅した。その後、債権者Bがこの代物弁済を詐害行為として取り消す旨の判決を得た。Dの相続人である上告人らは、詐害行為取消判決により代物弁済が失効し、債務者Eが所有権を回復したのだから、混同によって消滅した抵当権も復活したと主張して、抵当権設定登記の抹消回復登記手続き等を求めた。
事件番号: 昭和35(オ)865 / 裁判年月日: 昭和37年4月20日 / 結論: 棄却
抵当権者不知の間に不法に抹消された抵当権設定登記の回復登記について、登記上利害関係を有する第三者は承諾を拒みえない。
あてはめ
詐害行為取消しの効力は相対的なものであるから、債権者Bと受益者Dとの間で代物弁済が無効とされても、Dと債務者Eとの間では当該代物弁済は依然として有効である。そのため、Dが取得した所有権が債務者Eに復帰することもなく、代物弁済の付随的効果として生じた抵当権の混同消滅という事態も、D・E間では維持される。Dが取消訴訟において抵当権者としての優先利益を主張せず、一般担保を構成しないことを抗弁としなかった以上、Dは自ら抵当権者としての利益を喪失したものといえる。したがって、Dの相続人である上告人らは、債務者Eに対し抵当権の復活を主張することはできない。
結論
詐害行為取消しの効力は相対的なものであるため、債務者と受益者間では代物弁済は有効なまま残る。よって、混同消滅した抵当権の復活を債務者に主張することは認められない。
実務上の射程
民法改正後の425条(認容判決の効力が及ぶ範囲)の解釈においても、相対的効力説の基本原則を維持した判例として重要である。実務上、受益者は取消訴訟において、目的物が抵当権の付着によりそもそも「債権者を害する」状態にないこと(無資力要件や詐害性)を適切に主張・立証しなければ、本判決のように優先的な地位を完全に失うリスクがあることを示唆している。
事件番号: 昭和36(オ)553 / 裁判年月日: 昭和39年7月10日 / 結論: 破棄差戻
詐害行為として不動産売却行為を取り消し所有権取得登記の抹消を受益者に請求する訴は、受益者が当該不動産上に第三者のために右不動産の価格を上廻る被担保債権額について抵当権を設定している場合には、特段の事情のないかぎり、許されない。
事件番号: 昭和33(オ)1018 / 裁判年月日: 昭和36年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】詐害行為取消権(民法424条1項)が認められるためには詐害行為時及び取消権行使時の双方で無資力である必要があるが、行為時の無資力があれば行使時の無資力は推定され、相手方が資力回復を主張立証すべきである。 第1 事案の概要:債権者である被上告人が、債務者Dによる詐害行為の取消しを求めて提訴した事案。…