一般債権者に優先する抵当権の目的たる不動産の処分行為については、右抵当権によつて担保される債権額を超える限度においてのみ、否認権を行使することができ、かつ、右目的物が不可分な一筆の建物であるときは、右の限度において価額の償還を求め得るにとどまる。
一般債権者に優先する抵当権の目的たる不動産の処分行為に対する否認権の行使。
判旨
破産法上の否認権行使の対象が抵当権の設定された建物である場合、否認の効果は抵当債権額を超える限度にとどまり、建物全部の登記抹消や引渡しを求めることはできない。
問題の所在(論点)
抵当権が設定されている建物について否認権を行使する場合、建物全部の登記抹消および引渡しを請求することができるか。否認権行使の客観的範囲が問題となる。
規範
否認権行使の対象が抵当権の負担付不動産である場合、当該不動産の価値のうち、抵当債権額を超える限度においてのみ否認の効力が及ぶ。建物が物理的に不可分であっても、否認権行使による原状回復の範囲は、責任財産の保全という制度趣旨に鑑み、債権者の利益となる限度に限定される。
重要事実
破産者(上告人)が、被上告人との間で本件建物の売買契約を締結した。本件建物には、売買契約当時から既に抵当権の設定および登記がなされていた。破産管財人は、当該売買契約が否認対象であるとして、建物全部について所有権取得登記の抹消および建物の引渡しを求めたが、被上告人は善意の受益者であると認定された。
あてはめ
本件建物には、売買当時から有効な抵当権の設定および登記が存在していた。否認権の行使は、破産者の責任財産を回復し債権者の共同利益を図るためのものであるから、抵当債権額に相当する価値は元来一般債権者のための引き当てとはなり得ない。したがって、抵当債権を超える限度のみが否認権行使の対象となる。建物は不可分な存在であるが、法的な原状回復義務の範囲としては、建物全部の抹消登記や引渡しを命じることは認められない。
結論
抵当債権額を超える限度においてのみ否認権行使の対象となるため、建物全部の所有権移転登記抹消および建物全部の引渡しを求めることはできない。
実務上の射程
破産法上の否認権(詐害行為否認等)において、対象物件に抵当権等の優先権が設定されている場合の現物返還の可否を論じる際に用いる。民法上の詐害行為取消権における価額賠償の議論とも並行する論点であり、特に不動産の価値が抵当債権額を上回る場合の処理として重要である。
事件番号: 昭和33(オ)1089 / 裁判年月日: 昭和34年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】詐害行為取消権の行使において、目的物が不可分な一個の不動産である場合には、不動産の価格が被担保債権額を超過していても、債権保全のために当該売買契約を全部的に取り消すことができる。 第1 事案の概要:債権者(被上告人)が、債務者の行った不動産の売買契約を詐害行為として取り消すよう求めた事案。当該不動…