不動産所有権の移転行為を詐害行為としてその取消を請求する場合に、債務者より受益者への所有権移転登記の抹消に代えて、受益者より債務者への所有権移転登記手続を求めることが許される。
不動産所有権の移転行為を詐害行為として取り消す場合に受益者より債務者への所有権移転登記手続を求めることの許否
民法177条,民法424条
判旨
不動産が詐害行為として譲渡された場合、債権者は受益者に対し、登記を債務者に復帰させる方法として、抹消登記請求に代えて、受益者から債務者への直接の所有権移転登記を請求することができる。
問題の所在(論点)
詐害行為取消訴訟において、目的不動産の登記を受益者から債務者に復帰させる際、抹消登記手続ではなく、受益者から債務者への直接の所有権移転登記手続を求めることができるか。
規範
不動産の真正な所有者は、実体上の権利関係に合致しない登記名義人に対し、抹消登記請求に代えて、真正な所有名義を回復するための所有権移転登記(真正なる登記名義の回復)を請求しうる。この法理は、詐害行為取消権の行使により不動産の登記を債務者に復帰させる場合にも同様に適用される。
重要事実
債権者である被上告人は、債務者であるD株式会社が上告人に対して行った不動産の譲渡を詐害行為として取り消した。被上告人は、当該不動産の登記を上告人(受益者)からD株式会社(債務者)へ復帰させるにあたり、現在の所有権移転登記の抹消を求めるのではなく、上告人からD株式会社への直接の所有権移転登記を求めた。なお、本件では既にその請求権保全の仮登記が存在していた。
あてはめ
最高裁は、不動産の所有者でない者が登記名義人である場合に、真正な所有者が移転登記を請求しうるとする従来の判例を引用した。その上で、詐害行為取消訴訟における現物返還としての登記復帰も、実質的に債務者の責任財産を回復する手続である点において、一般の所有権に基づく登記請求と異なる論拠は見出しえないと判断した。したがって、被上告人が上告人に対し、抹消登記に代えて債務者への移転登記を求めることは適法である。
結論
詐害行為取消による現物返還として、受益者から債務者への直接の所有権移転登記を求めることは認められる。
実務上の射程
実務上、中間省略的な登記や複雑な権利変動がある場合に「真正なる登記名義の回復」は有用であるが、本判決はその法理を詐害行為取消後の原状回復(民法424条の6第1項等)にも拡張した。答案上は、登記請求の態様(抹消か移転か)が問われた際、当事者の便宜や実体関係への合致を理由に本判決の法理を援用できる。
事件番号: 昭和33(オ)1018 / 裁判年月日: 昭和36年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】詐害行為取消権(民法424条1項)が認められるためには詐害行為時及び取消権行使時の双方で無資力である必要があるが、行為時の無資力があれば行使時の無資力は推定され、相手方が資力回復を主張立証すべきである。 第1 事案の概要:債権者である被上告人が、債務者Dによる詐害行為の取消しを求めて提訴した事案。…
事件番号: 昭和61(オ)495 / 裁判年月日: 昭和63年7月19日 / 結論: 破棄差戻
抵当権の設定されている不動産について当該抵当権者以外の者との間にされた代物弁済予約及び譲渡担保契約が詐害行為に該当する場合において、右不動産が不可分のものであり、詐害行為の後に弁済等によつて右抵当権設定登記が抹消されたときは、その取消による原状回復は、右不動産の価額から右抵当権の被担保債権額を控除した残額の限度で価格賠…