不動産登記の抹消登記手続を求める訴は、たとえ、右抹消登記の実行が不可能であつても、それがため、訴の利益を失うものではない。
不動産登記の抹消登記手続を求める訴における訴の利益の有無
民訴法226条
判旨
詐害行為取消請求において、転得者が善意であるため転得者名義の登記の抹消が認められない場合であっても、受益者に対する登記抹消手続請求の訴えの利益は失われない。
問題の所在(論点)
詐害行為の取消しに伴い受益者に対し登記抹消手続を請求する場合において、善意の転得者の存在により登記の実行が法律上困難(不動産登記法146条1項等)であっても、当該請求は認められるか。
規範
登記抹消手続を求める訴えは、被告の意思表示(登記申請)を求める請求である。勝訴判決の確定によって意思表示がなされたとみなされる以上、不動産登記法上の制約等により現実に抹消登記が実行可能であるか否かは、当該請求に係る訴えの利益を左右するものではない。
重要事実
債務者Dが受益者Bに対して建物を売却し、所有権移転登記を完了した。これに対し、債権者である上告人は、D・B間の売買が詐害行為に当たるとして取消しと登記抹消を求めた。しかし、受益者Bからさらに転得者(連合会)に対して抵当権設定および所有権移転請求権保全の仮登記がなされており、転得者は詐害の事実につき善意であった。原審は、転得者が善意である以上、不動産登記法上の利害関係人の承諾が得られないため受益者名義の登記抹消は実行不可能であるとして、Bに対する請求を棄却した。
事件番号: 昭和49(オ)181 / 裁判年月日: 昭和49年12月12日 / 結論: 棄却
民法四二四条所定の詐害行為の目的たる権利の転得者から悪意で更に転得した者は、たとえその前者が善意であつても、同条に基づく債権者の追及を免れることができない。
あてはめ
登記抹消請求は、民事執行法上の意思表示を命ずる判決を求めるものである。本件では、D・B間の売買が詐害行為として取り消される以上、実体法上の原因は消滅している。転得者名義の登記が存続しており、不動産登記法上の手続としてB名義の登記抹消が直ちには実行できない状態(承諾が得られない状態)であっても、判決によってBの意思表示を擬制すること自体には法律上の利益が認められる。
結論
転得者が善意で登記の抹消が認められない場合でも、上告人の受益者Bに対する所有権移転登記抹消登記手続請求は認容されるべきである。
実務上の射程
詐害行為取消権の行使において、被告(受益者)が既に不動産を処分し、善意の転得者が現れている場面で、原状回復として登記抹消を求める際の訴えの利益を肯定する。転得者がいる場合に価額賠償だけでなく登記抹消を選択する余地を残す実務上重要な判断である。
事件番号: 昭和38(オ)596 / 裁判年月日: 昭和40年9月17日 / 結論: 棄却
不動産所有権の移転行為を詐害行為としてその取消を請求する場合に、債務者より受益者への所有権移転登記の抹消に代えて、受益者より債務者への所有権移転登記手続を求めることが許される。
事件番号: 昭和33(オ)1018 / 裁判年月日: 昭和36年3月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】詐害行為取消権(民法424条1項)が認められるためには詐害行為時及び取消権行使時の双方で無資力である必要があるが、行為時の無資力があれば行使時の無資力は推定され、相手方が資力回復を主張立証すべきである。 第1 事案の概要:債権者である被上告人が、債務者Dによる詐害行為の取消しを求めて提訴した事案。…