判旨
詐害行為取消権における受益者の善意の認定について、売買に異常性が認められず、悪意を推認すべき明確な事実がない限り、原審の証拠評価に基づく善意の認定は適法である。
問題の所在(論点)
詐害行為取消請求において、受益者の善意を認定するに足りる「十分な証拠」の判断基準、および悪意を推認すべき「取引の異常性」等の事実関係の評価が問題となる。
規範
詐害行為取消権(民法424条1項但書)における受益者の善意(債権者を害することを知らなかったこと)の判断は、特段の事情がない限り、原審の証拠選択および事実認定の裁量に委ねられる。具体的には、取引の異常性の有無や、悪意を推認させる明確な事実の存否により判断される。
重要事実
債権者(上告人)が、債務者と受益者(被上告人)との間で行われた売買について、詐害行為であるとしてその取消しを求めた事案。原審は、証拠に基づき受益者が善意であったと認定したが、上告人は、反対の認定をすべき明確な事実があるにもかかわらず漫然と善意を認めた点に証拠法則違反があるとして上告した。
あてはめ
本件売買について検討するに、原審が採用した証拠は受益者の善意を認定するに足りるものである。また、上告人が主張する事実は、必ずしも受益者の悪意を推認すべき明確かつ歴然とした事実とは断定できない。さらに、本件売買そのものが特に異常性を帯びていたものとも認められない。したがって、原審の証拠判断および事実認定に違法はない。
結論
受益者が債権者を害することを知らなかったと認められるため、詐害行為取消請求は認められない。
実務上の射程
受益者の善意・悪意は事実認定の問題であり、原則として上告審の判断に馴染まないが、取引態様が極めて異常な場合には、経験則上悪意が推認され、善意認定が違法となり得る。答案上は、取引の対価性や親族関係等の個別事情から「異常性」を検討する際の考慮要素として活用できる。
事件番号: 昭和39(オ)1328 / 裁判年月日: 昭和40年9月10日 / 結論: 棄却
債務超過の債務者が、特定の債権者だけに優先的に債権の満足を得させ、他の債権者を害する意図のもとに、自己の有する不動産あるいは重要な動産を右債権者に売却して、右売買代金債権と同債権者の有する債権とを相殺する旨の約定をし、同債権者も、これにより他の債権者を害することを知つて買い受けたときは、たとい右売買代金が適正価格である…