判旨
債務者による贈与契約が社会道徳、信義誠実の原則、または相続法規に反して無効であるとしても、そのことのみを理由として直ちに詐害行為取消権の対象となるものではない。
問題の所在(論点)
社会道徳違反や相続法規違反等により無効とされる法律行為が、民法424条に基づく詐害行為取消権の対象となり得るか。
規範
詐害行為取消権(民法424条)の対象となるのは、債務者が債権者を害することを知ってした「法律行為」であるが、その行為が公序良俗違反や信義則違反、あるいは相続法規に反することを理由として当然に無効とされる場合であっても、それだけで直ちに同条の取消権の対象として扱いうるものではない。
重要事実
債務者である訴外Dは、昭和14年10月頃に北支へ渡航する際、本件不動産を含む全財産を被上告人に贈与した。その後、昭和28年10月27日に所有権移転登記が経由された。上告人は、当該贈与契約が社会道徳や信義誠実の原則、さらには相続法規に反し無効であると主張し、民法424条に基づきその取消しを求めた。
あてはめ
上告人は、本件贈与契約が社会道徳、信義則、または相続法規に反して無効であると主張する。しかし、詐害行為取消権は債務者の責任財産を保全するための制度であり、仮に当該行為が公序良俗等に反して無効であったとしても、そのこと自体から当然に民法424条の適用が導かれるわけではない。原審が認定した事実関係に基づけば、上告人の主張は取消権の要件を充足させる根拠として不十分である。
結論
本件贈与契約が仮に社会道徳等に反し無効な行為であったとしても、それだけで民法424条に基づく取消権の対象となるものではない。したがって、上告人の請求は認められない。
実務上の射程
公序良俗違反等で無効な行為を詐害行為取消権によって取り消すことができるかという点につき、否定的な解釈を示したものといえる。もっとも、通説・実務では、無効な行為であっても詐害行為取消権の対象になり得ると解されているが(無効と取消の二重効)、本判決は単に「無効であること」のみを理由に取消権を行使することはできないという文脈で捉えるべきである。
事件番号: 昭和28(オ)1034 / 裁判年月日: 昭和30年10月11日 / 結論: 棄却
詐害行為となる債務者の行為の目的物が、不可分な一棟の建物であるときは、たとえその価額が債権者を超える場合でも、債権者は、右行為の全部を取り消すことができる。