商法第一四一条の適用または準用ある会社についての詐害設立取消には、民法第四二四条を適用する余地はない。
商法第一四一条と民法第四二四条の関係。
商法141条,有限会社法75条1項,民法424条
判旨
旧商法141条は民法424条の特則であるため、会社の詐害設立取消については、同条の適用または準用がある限りにおいて、民法424条を適用する余地はない。
問題の所在(論点)
会社設立が債権者を害する目的で行われた場合(詐害設立)、民法424条(詐害行為取消権)を適用して当該設立行為を取り消すことができるか。商法上の設立取消規定との関係が問題となる。
規範
旧商法141条(現行の会社法には直接の対応条文はないが、設立無効の訴え等に関連)の規定は、詐害行為取消権に関する一般規定である民法424条の特則である。したがって、商法上の取消規定の適用または準用がある会社設立については、民法424条を適用することはできない。
重要事実
上告人の債務者が会社(有限会社)を設立した行為が、債権者を害する詐害設立に該当するとして、民法424条に基づきその設立行為の取消しを求めて提訴した。原審は、商法の規定が民法の特則であることを理由に請求を排斥したため、上告人が憲法違反および解釈の誤りを理由に上告した。
あてはめ
商法141条(および有限会社法75条1項による準用)は、会社設立という団体法上の行為の性質に鑑み、詐害行為取消に関する民法424条の特則として設けられたものである。このように商法が特別の規定を置いている以上、法制度の整合性の観点から、一般法である民法の規定を重ねて適用することは許されない。本件有限会社の設立についても、商法・有限会社法の規定が優先的に適用されるべきである。
結論
詐害設立取消については民法424条を適用する余地はなく、商法の規定(特則)によらなければならない。
実務上の射程
会社法制定後の現在においては、詐害設立に対しては設立無効の訴え(会社法828条1項1号)や、法人格否認の法理、あるいは新設分割等の詐害行為取消(会社法22条、759条等)が議論の中心となるが、本判例は一般法と特別法の適用関係を示す基本原理として、答案上、特別の取消規定がある場合の民法424条の排除根拠として引用できる。
事件番号: 昭和32(オ)182 / 裁判年月日: 昭和34年3月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】債務者による贈与契約が社会道徳、信義誠実の原則、または相続法規に反して無効であるとしても、そのことのみを理由として直ちに詐害行為取消権の対象となるものではない。 第1 事案の概要:債務者である訴外Dは、昭和14年10月頃に北支へ渡航する際、本件不動産を含む全財産を被上告人に贈与した。その後、昭和2…
事件番号: 平成22(受)622 / 裁判年月日: 平成24年10月12日 / 結論: 棄却
株式会社を設立する新設分割がされた場合において,新たに設立する株式会社にその債権に係る債務が承継されず,新設分割について異議を述べることもできない新設分割をする株式会社の債権者は,詐害行為取消権を行使して新設分割を取り消すことができる。 (補足意見がある。)