判旨
裁判所は、当事者が申し立てていない事項について判決をすることはできず、原告が請求した数量を超えて売買契約の取消しや代償金の支払を命じることは処分権主義に反し、判決に影響を及ぼす法令違背となる。
問題の所在(論点)
当事者が訴訟において一定の数量を特定して請求している場合に、裁判所がその数量を超えて認容判決をすることが、民事訴訟法上の処分権主義に反し、違法となるか。
規範
民事訴訟法における処分権主義(現行246条)に基づき、裁判所は当事者が申し立てていない事項につき判決をすることはできない。給付訴訟等において数量的な請求がなされている場合、裁判所はその請求の限度を超えて認容することは許されない。
重要事実
被上告人(原告)は、第一審以来、特定の毛糸(D印毛糸)900ポンドについて、売買契約の取消しとその引渡し、およびこれに代わる代償金の支払を訴求していた。しかし、原審(名古屋高裁)は、このD印毛糸について、請求の限度である900ポンドを超え、990ポンドにつき売買契約の取消しと代償金の支払を命ずる判決を言い渡した。
あてはめ
本件において、被上告人が訴訟を通じて求めていたのは、あくまで900ポンドの毛糸に関する権利主張であった。これに対し、原審が990ポンドという請求範囲を超える数量について取消しと支払を命じたことは、明らかに「当事者の申し立てない事項」について判決をしたものといえる。このような判決は、審判の対象を当事者の意思に委ねる処分権主義の原則に真っ向から抵触するものである。
結論
原判決は請求の限度を超えて認容した点において処分権主義に違反し、判決に影響を及ぼす明らかな法令違背があるため、破棄を免れない。
実務上の射程
処分権主義(民訴法246条)の質的・量的限界のうち、量的限界に関する典型的な判例である。答案上では、一部請求や過失相殺、損害賠償額の算定において、申立ての範囲を特定し、裁判所がその範囲に拘束されることを論じる際の根拠として用いる。
事件番号: 昭和33(オ)1089 / 裁判年月日: 昭和34年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】詐害行為取消権の行使において、目的物が不可分な一個の不動産である場合には、不動産の価格が被担保債権額を超過していても、債権保全のために当該売買契約を全部的に取り消すことができる。 第1 事案の概要:債権者(被上告人)が、債務者の行った不動産の売買契約を詐害行為として取り消すよう求めた事案。当該不動…