勝訴の当事者は上告の利益を欠き、上告は不適法である。
勝訴の当事者と上告の利益
民訴法393条
判旨
民法395条但書(改正前)に基づく抵当権者の賃貸借解除請求訴訟は必要的共同訴訟であり、一部の共同控訴人のみが上告した場合でも全員が上告人の地位を取得するが、請求棄却判決に対する被告側の上告は上告の利益を欠き不適法である。
問題の所在(論点)
1.民法395条但書(改正前)に基づく解除請求訴訟の性質(必要的共同訴訟か)。2.一部の共同控訴人のみが上告した場合の効力。3.請求棄却判決を受けた被告による、判決理由の不服を目的とした上告に「上告の利益」が認められるか。
規範
1.民法395条但書(改正前)に基づく抵当権者の賃貸借解除請求訴訟は、合一確定の必要があるため必要的共同訴訟である。2.上告の利益は、原判決の主文が自己に不利益である場合に認められる。勝訴判決を得た当事者が、理由の不満を理由に主文の破棄を求めることは、自己に不利益な事項を求めるものであり上告の利益を欠く。
重要事実
抵当権者である原告(被上告人)が、民法395条但書(旧法)に基づき賃貸借の解除を求めて提訴した。原審は、当該賃貸借は抵当権を妨害する法的存在になり得ず、解除を請求する必要も実益もないとして、第一審判決を破棄し、原告の請求を棄却した。これに対し、被告(控訴人)のうち1名(株式会社たから荘)のみが上告を申し立てた。
あてはめ
1.本件は旧民法395条但書に基づく解除請求であり、必要的共同訴訟である。そのため、被告1名のみの上告であっても、他の共同控訴人(A2)も当然に上告人たる地位を取得する。2.しかし、原審の主文は「第一審判決を破棄し、原告の請求を棄却する」というものであり、被告側(上告人ら)にとって完全な勝訴判決である。上告人は原判決の理由に不満があるとしても、主文において自己に有利な結果を得ている以上、上告によって更なる利益を得る余地はない。
結論
本件上告は、自己に不利益な事項を求めるものに帰し、上告の利益を欠くため、不適法として却下される。
実務上の射程
必要的共同訴訟における上告の効力の及び方(民訴法40条1項の準用)を確認する際、および「上告の利益」が主文を基準に判断される(形式的不服説的運用)ことを示す際の基礎資料となる。特に勝訴当事者による理由不服の上告排除の典型例である。
事件番号: 昭和36(オ)363 / 裁判年月日: 昭和37年4月10日 / 結論: 棄却
書証として提出された鑑定書に鑑定理由の記載がないことは、右書証の証拠能力に影響がない。
事件番号: 昭和61(オ)857 / 裁判年月日: 昭和63年2月16日 / 結論: 棄却
抵当権者に対抗することができない農地の賃貸借であつても、所轄農業委員会等により当該賃借人以外の者に競買適格証明書を交付しない取扱いがされているため競買申出人が右賃借人に限定され、その結果、抵当権者に損害を及ぼすときに限り、抵当権者は、民法三九五条但書の準用により右賃貸借の解除を請求することができる。