民法第三九五条により抵当権者に対抗しうる土地建物の短期賃貸借の期間が抵当権実行による差押の効力の生じた後に満了した場合には、賃借人は借地法第六条、借家法第二条による法定更新をもつて抵当権者に対抗できない。
民法第三九五条の短期賃貸借と競売開始後の法定更新。
民法395条,民法602条,借地法6条,借家法2条
判旨
抵当権の実行による差押えの効力が生じた後に短期賃貸借の期間が満了した場合、その賃貸借の更新を抵当権者に対抗することはできない。
問題の所在(論点)
抵当権設定登記後に設定された、改正前民法395条所定の短期賃貸借について、抵当権実行による差押えの効力発生後に期間が満了した場合、賃借人は借家法等の更新規定に基づき、その更新を抵当権者に対抗できるか。
規範
抵当権設定後の短期賃貸借(改正前民法395条)であっても、原則として借地法・借家法の適用は妨げられない。しかし、抵当不動産の利用と抵当権者の利益を調整する同条の趣旨に鑑みれば、抵当権実行による差押えの効力が生じた後に賃貸借期間が満了した場合には、借地法6条・借家法2条の適用(法定更新等)はなく、その更新を抵当権者に対抗できないと解すべきである。
重要事実
1. 被上告人が本件物件に抵当権を設定し、登記を完了した。2. その後、抵当権設定者である上告人組合は、他の上告人3名との間で、期間3年の短期賃貸借を設定した。3. 被上告人が抵当権に基づき競売を申し立て、差押えの効力(競売開始決定の送達および登記)が生じた。4. 差押えの効力発生後に、本件賃貸借の期間が満了した。
あてはめ
本件賃貸借は、被上告人の抵当権設定登記後に設定されたものである。その後、抵当権に基づき競売手続が開始され、差押えの効力が生じた。本件賃貸借の期間満了(昭和36年9月1日)は、差押えの効力発生後である。この場合、賃借権保護の限界として借家法等の適用は制限されるため、上告人らは賃貸借の更新を被上告人に対抗できず、期間満了によって賃借権は消滅したと評価される。
結論
抵当権実行による差押え後に期間が満了した短期賃貸借の更新は、抵当権者に対抗できない。したがって、本件賃貸借は期間満了により消滅している。
実務上の射程
平成15年民法改正により短期賃貸借保護制度(旧395条)は廃止されたが、現行法下の抵当建物使用者の明渡猶予制度(新395条)の理解や、差押え後の賃貸借の効力を検討する際の基礎となる判断枠組みとして意義がある。特に、差押えという手続的画期が賃借権の対抗力に与える影響を示す。
事件番号: 平成7(オ)1346 / 裁判年月日: 平成8年9月13日 / 結論: 棄却
一 民法三九五条ただし書にいう抵当権者に損害を及ぼすときとは、原則として、解除請求訴訟の事実審口頭弁論終結時において、抵当不動産の競売による売却価額が同条本文の短期賃貸借の存在により下落し、これに伴い抵当権者が被担保債権の弁済として受ける配当等の額が減少するときをいう。 二 解除請求の対象である短期賃貸借の期間が抵当権…
事件番号: 平成1(オ)1209 / 裁判年月日: 平成3年3月22日 / 結論: その他
抵当権者は、民法三九五条ただし書の規定により解除された短期賃貸借ないしこれを基礎とする転貸借に基づき抵当不動産を占有する者に対し、抵当権に基づく妨害排除請求として又は抵当権設定者の所有物返還請求権の代位行使として、その明渡しを求めることはできない。
事件番号: 昭和44(オ)932 / 裁判年月日: 昭和44年12月11日 / 結論: 棄却
抵当権設定後競売開始決定までの間に設定された短期賃貸借は、民法六〇二条所定の期間後は当然に効力を失い、法定更新されない。