抵当権設定後競売開始決定までの間に設定された短期賃貸借は、民法六〇二条所定の期間後は当然に効力を失い、法定更新されない。
民法三九五条によつて保護を受ける短期賃貸借と法定更新
民法395条
判旨
抵当権設定後に設定された建物賃借権は、民法602条所定の期間(3年)を経過した後は、抵当権者および競落人に対抗することができない。
問題の所在(論点)
抵当権設定後に成立した建物賃借権が、民法602条に定める期間を経過した場合に、抵当権者(または競落人)に対抗することができるか。
規範
抵当権設定後に設定された賃借権が抵当権者に対抗できるかについては、民法395条(旧法)および602条の規定に従う。短期賃貸借の期間(建物については3年)を経過した場合には、当該賃借権をもって抵当権者またはその競売による買受人に対抗し得ない。
重要事実
本件建物の賃借権は、根抵当権が設定された後、かつ、その根抵当権に基づく競売開始決定がなされる前に設定されたものである。当該賃借権の設定から3年を経過した日は昭和43年10月27日であった。上告人はこの日以降も賃借権を被上告人(抵当権者側)に対抗できると主張した。
あてはめ
事件番号: 昭和45(オ)207 / 裁判年月日: 昭和45年6月16日 / 結論: 棄却
存続期間の定めのない建物所有を目的とする土地賃貸借の存続期間は借地法二条一項、三条の定めるところにより三〇年であるから、右賃貸借は民法三九五条により抵当権者に対抗しうべき賃貸借に当らない。
本件の賃借権は根抵当権設定後に設定されたものである。民法602条の規定によれば、建物の短期賃貸借期間は3年である。本件賃借権の設定から3年が経過した昭和43年10月27日以降は、特段の事情がない限り、抵当権の実行を妨げる法的効力を維持できない。したがって、同日以降は民法395条および602条に基づき、抵当権者に対抗し得ない状態となったといえる。
結論
本件賃借権は、設定後3年を経過した昭和43年10月27日以降、被上告人に対抗し得ない。
実務上の射程
本判決は平成15年の民法改正前の旧395条(短期賃貸借制度)に基づく判断である。現行法下では短期賃貸借保護制度は廃止され、抵当権設定後の賃借権は原則として競落人に対抗できない(現395条の明渡猶予制度等による保護のみ)。ただし、抵当権設定前の賃借権との対抗関係や、旧法下の事案を検討する際の期間計算の基準として、今なお基本的な判断枠組みを示している。
事件番号: 昭和51(オ)1028 / 裁判年月日: 昭和52年2月17日 / 結論: 棄却
抵当不動産につき、抵当権者自身を権利者とする、賃借権又は抵当債務の不履行を停止条件とする条件付賃借権が設定され、その登記又は仮登記が抵当権設定登記と順位を前後して経由された場合において、競売申立までに対抗要件を具備した短期賃借権者が現われないまま、競落によつて第三者が当該不動産の所有権を取得したときには、特段の事情のな…
事件番号: 昭和44(オ)342 / 裁判年月日: 昭和45年3月24日 / 結論: 棄却
普通建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約において期間を一〇年と定めた場合には、右存続期間の約定は借地法一一条により、その定めがなかつたものとみなされ、右賃貸借の存続期間は、同法二条一項本文により契約の時から三〇年と解すべきである。 (反対意見がある。)