抵当不動産につき、抵当権者自身を権利者とする、賃借権又は抵当債務の不履行を停止条件とする条件付賃借権が設定され、その登記又は仮登記が抵当権設定登記と順位を前後して経由された場合において、競売申立までに対抗要件を具備した短期賃借権者が現われないまま、競落によつて第三者が当該不動産の所有権を取得したときには、特段の事情のない限り、抵当権者の賃借権は、それが短期賃借権であつても消滅する。
競売手続が完結した場合と抵当権と同時に設定された抵当権者自身を権利者とする賃借権の帰すう
民法369条,民法395条,民法601条
判旨
抵当権者が担保価値確保のために設定した賃借権は、第三者の短期賃借権が現れないまま買受人が所有権を取得した場合、その目的を失い消滅する。この場合、買受人は所有権に基づき、賃借権設定登記等の抹消を請求できる。
問題の所在(論点)
抵当権者が担保価値維持のために設定した賃借権(いわゆる抵当賃貸借)が、競売による所有権移転後も存続するか。また、買受人は当該賃借権の登記抹消を請求できるか。
規範
抵当権者自身を賃借人とする賃貸借契約(または停止条件付賃貸借契約)の目的は、特段の事情のない限り、抵当不動産の担保価値を確保するため、後順位の短期賃借権等の対抗要件具備を排除することにある。したがって、差押えの効力が生じるまでに第三者の短期賃借権が現れないまま買受人が所有権を取得したときは、当該抵当権者の賃借権は目的を失い消滅し、その登記は実体関係を欠くものとなる。
重要事実
抵当権者である上告人は、債務者との間で、債務不履行を停止条件とする存続期間3年の賃借権設定契約を締結し、仮登記を経由した。その後、先順位抵当権者による競売手続きが開始され、被上告人が本件物件を競落して所有権を取得した。競売開始決定による差押えの効力が発生するまでに、第三者による短期賃借権が設定された事実はなかった。
事件番号: 昭和45(オ)207 / 裁判年月日: 昭和45年6月16日 / 結論: 棄却
存続期間の定めのない建物所有を目的とする土地賃貸借の存続期間は借地法二条一項、三条の定めるところにより三〇年であるから、右賃貸借は民法三九五条により抵当権者に対抗しうべき賃貸借に当らない。
あてはめ
本件賃借権は、上告人が担保価値を確保する目的で設定したものである。しかし、実際には差押えの効力発生までに第三者の短期賃借権は出現しなかった。そうであれば、買受人が所有権を取得した時点で、本件賃貸借契約はその目的を達し、または目的を失ったといえる。したがって、本件賃借権は消滅し、これに基づく仮登記は無効なものとなったと評価される。
結論
本件賃借権は消滅したため、買受人である被上告人は所有権に基づき、上告人に対し本件仮登記の抹消登記手続を請求することができる。
実務上の射程
抵当権者が「占有屋」等の対策として設定する防御的賃借権の有効性を認めつつ、競落後の買受人との関係では、必要性がなくなった時点で消滅させることで、不動産取引の安全を図る判断枠組みとして活用される。
事件番号: 昭和44(オ)932 / 裁判年月日: 昭和44年12月11日 / 結論: 棄却
抵当権設定後競売開始決定までの間に設定された短期賃貸借は、民法六〇二条所定の期間後は当然に効力を失い、法定更新されない。
事件番号: 平成4(オ)2188 / 裁判年月日: 平成7年1月19日 / 結論: 破棄差戻
一棟の建物のうち構造上及び利用上の独立性のある建物部分に賃借権が設定されたにもかかわらず、建物全部について賃借権設定登記がされている場合、右登記の抹消登記手続請求は、右建物部分を除く残余の部分に関する限度において認容すべきである。
事件番号: 昭和27(オ)549 / 裁判年月日: 昭和29年5月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】金銭債務を担保する目的でなされた条件付代物弁済予約(条件附所有権移転契約)において、債務者が弁済期に債務を履行しないときは、当該予約に基づき目的物の所有権が債権者に移転する。 第1 事案の概要:被上告人と債務者(D、E)との間に貸金債権が存在し、併せて「債務者が期日に弁済しないときは、本件不動産を…