存続期間の定めのない建物所有を目的とする土地賃貸借の存続期間は借地法二条一項、三条の定めるところにより三〇年であるから、右賃貸借は民法三九五条により抵当権者に対抗しうべき賃貸借に当らない。
存続期間の定めのない建物所有を目的とする土地賃貸借と抵当権との関係
借地法2条,民法395条
判旨
建物所有を目的とする期間の定めのない土地賃貸借は短期賃貸借にあたらず、抵当権に対抗できない。一方、抵当権に対抗しうる短期賃借権(旧法)の解約申入において、抵当権の実行による競落事実は正当事由を認める上で極めて有力な資料となる。
問題の所在(論点)
抵当権設定後に成立した「期間の定めのない」土地・建物賃貸借の対抗力、および建物賃貸借の解約申入における「正当事由」の判断基準が問題となる。
規範
1. 建物所有を目的とする期間の定めのない土地賃貸借は、借地法上の存続期間(30年)が適用されるため、民法602条の短期賃貸借には該当せず、抵当権設定後の賃借権は抵当権者に対抗できない。2. 短期賃貸借(旧民法395条)として抵当権に対抗しうる建物賃貸借について、競落人が解約申入をする際の「正当の事由」(旧借家法1条ノ2)の有無は、短期賃貸借制度の趣旨(抵当権の効力を不当に害さない範囲での保護)に照らし、競落による取得である事実を極めて有力な資料として判断すべきである。
重要事実
訴外D銀行が昭和37年、E所有の本件土地建物に根抵当権を設定し登記。昭和41年1月、上告人はEから土地建物を期間の定めなく賃借。同年3月、土地建物の賃借権設定登記を経た。昭和42年3月、被上告人が抵当権実行により競落し代金完納、同年4月に移転登記。被上告人は上告人に対し、賃貸借の解約申入を行い、土地建物の明渡し等を求めた。
事件番号: 昭和44(オ)932 / 裁判年月日: 昭和44年12月11日 / 結論: 棄却
抵当権設定後競売開始決定までの間に設定された短期賃貸借は、民法六〇二条所定の期間後は当然に効力を失い、法定更新されない。
あてはめ
土地については、建物所有目的かつ期間の定めがない場合、借地法の規定により存続期間は30年となる。これは民法602条の期間を超えるため、短期賃貸借として抵当権に対抗することはできない。建物については、期間の定めのない賃貸借は短期賃貸借に該当し対抗力を有する。しかし、被上告人(競落人)による解約申入に関し、短期賃貸借制度が抵当権の円滑な実行を妨げないための暫定的な保護であるという趣旨を考慮すれば、競落の事実は正当事由の認定において極めて有力に働く。賃貸借成立から3年8か月余が経過している事実も併せれば、正当事由は認められる。
結論
土地賃借権は短期賃貸借に該当せず抵当権に対抗できないため抹消を免れない。建物賃貸借は解約申入に正当事由が認められるため、終了する。
実務上の射程
旧法下の判例であるが、抵当権実行による競落が正当事由の判断に強い影響を及ぼすという法理は、現行法の借地借家法下でも、期間満了による更新拒絶や解約申入の正当事由判断において参照されうる。特に、抵当権と利用権の調整局面における利益衡量の指針として重要である。
事件番号: 昭和51(オ)1028 / 裁判年月日: 昭和52年2月17日 / 結論: 棄却
抵当不動産につき、抵当権者自身を権利者とする、賃借権又は抵当債務の不履行を停止条件とする条件付賃借権が設定され、その登記又は仮登記が抵当権設定登記と順位を前後して経由された場合において、競売申立までに対抗要件を具備した短期賃借権者が現われないまま、競落によつて第三者が当該不動産の所有権を取得したときには、特段の事情のな…
事件番号: 昭和40(オ)28 / 裁判年月日: 昭和43年10月31日 / 結論: その他
建物所有を目的とする土地賃貸借において、賃借権の譲渡、賃借物の転貸を許容する旨の特約があり、かつ、その賃借権の設定および右特約について登記がされているときは、賃貸人が右賃借権の消滅を第三者に対抗するためには、民法第一七七条の規定の類推適用により、その旨の登記を経由しなければならない。