建物所有を目的とする土地賃貸借において、賃借権の譲渡、賃借物の転貸を許容する旨の特約があり、かつ、その賃借権の設定および右特約について登記がされているときは、賃貸人が右賃借権の消滅を第三者に対抗するためには、民法第一七七条の規定の類推適用により、その旨の登記を経由しなければならない。
賃借権の譲渡転貸許容の特約がされその旨の登記がされている土地賃貸借において賃借権の消滅を第三者に対抗するためにはその旨の登記を経ることを要するか
民法177条,民法601条,民法612条,借地法1条
判旨
自由譲渡特約付の賃借権が設定登記されている場合、賃貸人は賃借権の消滅を登記なくして第三者に対抗できない。また、賃料不払による適法な解除後にされた相殺の意思表示は、解除の効力に影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
1. 解除後になされた相殺の意思表示により、適法に成立した解除の効力が遡及的に否定されるか。 2. 自由譲渡特約付きで登記された賃借権について、賃貸人がその「消滅」を第三者に対抗するために登記を要するか。
規範
1. 債務不履行を理由とする契約解除が適法になされた後は、たとえその後に賃借人の相殺の意思表示によって賃料債務が遡及的に消滅したとしても、一度発生した解除の効力は左右されない。 2. 建物所有目的の土地賃貸借において、譲渡・転貸を許す特約(自由譲渡特約)があり、かつ賃借権の設定および当該特約の双方が登記されている場合、その実質は地上権の設定と異ならない。したがって、賃貸人が賃借権の消滅(解除等)を当該賃借権の譲受人や利害関係人に対抗するには、民法177条を類推適用し、賃借権消滅(登記の抹消)の登記を具備することを要する。
重要事実
賃借人A1は、譲渡・転貸の自由特約を付して本件土地を賃借し、その旨の登記を了していた。その後、土地所有権はDから被上告人に移転した。A1の賃料不払を理由に、被上告人は昭和29年12月27日に解除の意思表示を行い、これは適法に効力を生じた。A1は解除後の同月28日または後の昭和32年に相殺の意思表示を行った。一方、A1は昭和30年12月頃、他の上告人らに対し賃借権の持分を譲渡し、譲受人らは持分取得登記を了した。被上告人は、譲受人らに対し賃借権の消滅を主張した。
あてはめ
1. 本件解除は昭和29年12月27日に効力を生じているところ、相殺の意思表示はそれ以降になされたものである。判例によれば、適法な解除後の相殺は解除の効力に影響しないため、本件賃貸借は解除により有効に消滅している。 2. 本件賃借権は、建物所有目的かつ自由譲渡特約付で登記されている。このような賃借権は物権的性格が強く、地上権に準じて取り扱うべきである。譲受人らは、解除後の昭和30年に持分譲渡を受け登記を具備している。被上告人は、賃借権消滅(登記抹消)の手続を譲受人らの登記より前に行わない限り、民法177条類推適用により、賃借権の消滅をこれら第三者に対抗することはできない。
結論
1. A1に対する解除は有効であり、事後の相殺により左右されない。 2. 他の上告人ら(譲受人ら)に対しては、賃借権消滅の登記を経ていない被上告人は賃借権の消滅を対抗できず、請求は棄却される。
実務上の射程
対抗要件の問題として、不動産賃借権の物権化を肯定した重要判例である。答案上では、自由譲渡特約付かつ登記済みの賃借権について、177条が類推適用されるというロジック(地上権との実質的同一性)を明示することが重要となる。また、解除と相殺の先後関係についても、解除が「適法に」なされた後の相殺は無効という処理を確定させるために用いる。
事件番号: 昭和41(オ)431 / 裁判年月日: 昭和42年12月22日 / 結論: 棄却
訴状をもつて賃貸借契約の解約申入れをした事実および右解約申入れによる賃貸借契約終了の効果の発生を主張し、その後において右主張を撤回したからといつて、右解約申入れがされた事実までが消滅するものではなく、さらにその後において再度右主張をすることができる。
事件番号: 昭和43(オ)1294 / 裁判年月日: 昭和47年3月2日 / 結論: 破棄差戻
国と私人との間に、私人を売主として成立した土地売買契約において、目的土地の利用方法に関する特約は、当事者にとつて極めて重要な特約であるから、右契約につき予算決算及び会計令(昭和二七年政令七六号による改正前)六八条に基づき契約書が作成された以上、かかる特約の趣旨は契約者に記載されるのが通常の事態であり、これに記載されてい…
事件番号: 昭和49(オ)1087 / 裁判年月日: 昭和50年11月28日 / 結論: その他
仮登記担保権者が目的不動産を自己の所有に帰属させるとの意思表示をしただけで清算をしないで仮登記のまま目的不動産を第三者に譲渡し、第三者が本登記を経た場合において、本登記が債務者の意思に基づかずにされたときは、債務者は第三者に対して右本登記の抹消手続を請求することができる。