訴状をもつて賃貸借契約の解約申入れをした事実および右解約申入れによる賃貸借契約終了の効果の発生を主張し、その後において右主張を撤回したからといつて、右解約申入れがされた事実までが消滅するものではなく、さらにその後において再度右主張をすることができる。
訴状をもつてする賃貸借解約申入れをした旨の事実主張の撤回と右解約申入れの効果
民訴法137条,借家法1条ノ2
判旨
訴状をもってされた賃貸借契約の解約申入れの意思表示は、その後に訴訟上で解約申入れの事実や契約終了の効果に関する主張が撤回されたとしても、その意思表示自体が当然に消滅するものではない。
問題の所在(論点)
訴状によって行われた解約申入れの意思表示につき、訴訟上でその主張が撤回された場合、実体法上の解約申入れの効力も消滅するか。借地借家法(旧借家法)上の解約申入れの存否が争点となる。
規範
訴訟行為としての主張の撤回と、その主張の対象となった実体法上の意思表示の効力は峻別される。一度有効に発生した解約申入れという実体法上の意思表示は、特段の事情がない限り、訴訟上の主張の撤去によって遡及的に消滅したり、その事実自体が否定されたりするものではない。
重要事実
賃貸人(被上告人)が、賃借人(上告人)に対し、本件建物の賃貸借契約を終了させるべく、訴状をもって解約申入れの意思表示を行った。その後、被上告人は訴訟の過程で、当該解約申入れによる賃貸借契約終了の効果に関する主張を撤回した。これに対し賃借人側は、主張の撤回により解約申入れの事実自体が消滅し、解約の効果は認められないと主張して争った。
事件番号: 昭和40(オ)554 / 裁判年月日: 昭和42年9月14日 / 結論: 棄却
甲に対して建物明渡を命じた判決に基づき、当該訴訟の原告乙の単独申請によつてされた右建物の所有権移転登記であつても、右登記が実体的権利関係に合致しているのみならず、甲が右登記義務履行について有する同時履行の抗弁権も消滅しており、かつ、登記当時他に右建物の帰属について利害関係を有する第三者が存在していない場合には、甲は、右…
あてはめ
被上告人が訴状により解約申入れを行い、それが上告人に到達した時点で、実体法上の意思表示としての効果が発生している。その後、被上告人が訴訟において「解約申入れにより契約が終了した」という法律上の主張を撤回したとしても、それはあくまで訴訟活動上の評価の変更にすぎない。一度なされた「解約を申し入れる」という事実は、主張の撤回によって遡って消滅するものではなく、裁判所は当該事実に基づき、正当事由の有無を判断して解約の効力を認めることができる。
結論
解約申入れの主張を撤回しても、解約申入れがなされた事実は消滅しない。したがって、原審が正当事由を認めて賃貸借の終了を肯定した判断は適法である。
実務上の射程
訴状という書面を用いた意思表示の到達による効果を重視する判例である。民法上の意思表示(解除・解約申入れ等)を訴状で行う実務において、後に訴訟戦略上、予備的主張に回したり主張を整理したりする場合でも、実体法上の効果は残存することを意識した答案構成が求められる。
事件番号: 昭和39(オ)922 / 裁判年月日: 昭和42年1月12日 / 結論: 棄却
競買の申出の追認は、競売事件の完結後でも、有効にすることができる。
事件番号: 昭和42(オ)901 / 裁判年月日: 昭和43年3月8日 / 結論: 棄却
弁護士が登記申請の双方代理をしても、その弁護士の行為は、特段の事由のないかぎり、弁護士法第二五条第一号に違反しない。