弁護士が登記申請の双方代理をしても、その弁護士の行為は、特段の事由のないかぎり、弁護士法第二五条第一号に違反しない。
登記申請の双方代理と弁護士法第二五条第一号
弁護士法25条1号,民法108条
判旨
登記申請行為は公法上の行為であり、義務の履行にすぎないため、民法108条本文の禁止する双方代理には当たらず、弁護士法25条1号にも抵触しない。
問題の所在(論点)
同一人が登記権利者および登記義務者双方の代理人として登記申請を行う行為が、民法108条の禁止する双方代理として無効になるか。また、代理人が弁護士である場合、弁護士法25条1号(職務を行い得ない事件)に抵触するか。
規範
1. 登記申請行為は、国家機関に対し一定内容の登記を要求する公法上の行為であって、民法上の法律行為ではない。また、既発生の権利変動につき義務の履行としてなされるものであり、代理人によって新たな利害関係が創造されるものでもないため、民法108条本文に違反せず、双方代理であっても無効とはならない。 2. 弁護士が双方から登記申請の依頼を受けた場合、特段の事由がない限り、依頼者の信頼を裏切り利益を害するものではないため、弁護士法25条1号に違反しない。
重要事実
登記権利者である被上告人と、登記義務者である上告人は、それぞれ訴外D(弁護士)に対し、本件所有権移転登記申請行為についての代理権を付与した。Dは、これに基づき双方の代理人として本件所有権移転登記手続を行ったが、上告人側がこの双方代理の無効を主張して争った。
あてはめ
本件登記申請は、上告人と被上告人の双方から代理権を付与されたDによってなされた。登記申請は公法上の行為であり、単なる「義務の履行」に該当する。そのため、Dが双方を代理しても当事者間に新たな利害関係を創出する余地はなく、民法108条の法意には反しない。また、弁護士であるDの行為に関しても、原審の認定によれば依頼者の信頼を裏切るような「特段の事由」は認められないため、評価上、弁護士法違反も成立しない。
結論
本件登記申請は有効である。登記申請における双方代理は民法108条に抵触せず、弁護士が行う場合も原則として弁護士法25条1号に違反しない。
実務上の射程
登記申請が「債務の履行」(民法108条但書)に準じる性質を有することを明言した点に意義がある。司法試験においては、民法108条の禁止の趣旨(利益相反の防止)を論ずる際、公法上の行為や単なる義務の履行という性質に着目して適用除外を導く際の論理として活用できる。
事件番号: 昭和40(オ)554 / 裁判年月日: 昭和42年9月14日 / 結論: 棄却
甲に対して建物明渡を命じた判決に基づき、当該訴訟の原告乙の単独申請によつてされた右建物の所有権移転登記であつても、右登記が実体的権利関係に合致しているのみならず、甲が右登記義務履行について有する同時履行の抗弁権も消滅しており、かつ、登記当時他に右建物の帰属について利害関係を有する第三者が存在していない場合には、甲は、右…
事件番号: 昭和42(オ)266 / 裁判年月日: 昭和42年10月5日 / 結論: 棄却
宅地建物取引業者は依頼者の代理人となれる。
事件番号: 昭和41(オ)431 / 裁判年月日: 昭和42年12月22日 / 結論: 棄却
訴状をもつて賃貸借契約の解約申入れをした事実および右解約申入れによる賃貸借契約終了の効果の発生を主張し、その後において右主張を撤回したからといつて、右解約申入れがされた事実までが消滅するものではなく、さらにその後において再度右主張をすることができる。
事件番号: 昭和36(オ)513 / 裁判年月日: 昭和36年12月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の二重譲受人等の第三者が民法177条の「第三者」に該当しないとされるためには、単に権利の存在を知っているだけでは足りず、相手方の登記の欠如を主張することが信義則(民法1条2項)に反すると認められるほどの強い「害意」を有する背信的悪意者であることを要する。 第1 事案の概要:上告人(被告)は本…