宅地建物取引業者は依頼者の代理人となれる。
宅地建物取引業者は依頼者の代理人となれるか
商法543条,宅地建物取引業法13条
判旨
宅地建物取引業者であっても、依頼者から建物の売却及び売買代金の受領について代理権を授与された場合には、有効な代理人となり得る。また、代理人の補助者に対する弁済は、代理権の範囲内にある限り本人に対する弁済としての効力を有する。
問題の所在(論点)
1. 宅地建物取引業者が依頼者の代理人として売買代金を受領することができるか。2. 代理権を有する者の補助者(番頭)に対してなされた代金支払の効力が本人に及ぶか。
規範
1. 宅地建物取引業者の地位にある者であっても、個別の授権に基づき依頼者の代理人となることは妨げられない。2. 建物の売却に関する代理権を授与された者は、特段の事情のない限り、それに伴う代金受領の権限も有する。3. 代理人の使用人(番頭等)に対してなされた支払は、当該使用人が代理人の職務を補助する立場にある限り、有効な代金領収として本人に帰属する。
重要事実
上告人(売主)は、本件建物の売却をDに依頼した。Dは上告人本人から直接、または復任権を与えられたEを介して、売却及び代金受領に関する代理権を授与されていた。その後、買主側はDの番頭であるGに対して売買代金を提供し、Gがこれを受領した。上告人は、宅地建物取引業者は代理人になれないことや、商法上の制限(544条:支配人の代理権制限等)を理由に、Dによる代金受領の効力を否定し、本件売買の有効性等を争った。
事件番号: 昭和42(オ)901 / 裁判年月日: 昭和43年3月8日 / 結論: 棄却
弁護士が登記申請の双方代理をしても、その弁護士の行為は、特段の事由のないかぎり、弁護士法第二五条第一号に違反しない。
あてはめ
1. 宅地建物取引業者という地位は、私法上の委任に基づく代理人となることを禁止するものではない。本件においてDは上告人(または復代理人選任権のあるE)から適法に代理権を授与されており、その権限には売買代金の受領も含まれる。2. Dの補助者であるGが代金を受領した事実は、Dが有する代金受領権限の行使として認められる。したがって、Gへの支払は、代理人Dへの支払と同一視でき、本人である上告人に対する有効な弁済となる。
結論
宅地建物取引業者Dは適法な代理人であり、その番頭Gによる代金受領の効力は上告人に帰属する。したがって、上告人の請求は認められない。
実務上の射程
不動産取引において、仲介業者(宅建業者)が単なる媒介にとどまらず、代金受領権限を含む代理権を授与される実務上の可能性を肯定した判例である。答案上では、代金領収の権限の有無が問題となる場面で、権限の範囲及び補助者による受領の有効性を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和36(オ)513 / 裁判年月日: 昭和36年12月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の二重譲受人等の第三者が民法177条の「第三者」に該当しないとされるためには、単に権利の存在を知っているだけでは足りず、相手方の登記の欠如を主張することが信義則(民法1条2項)に反すると認められるほどの強い「害意」を有する背信的悪意者であることを要する。 第1 事案の概要:上告人(被告)は本…
事件番号: 昭和35(オ)276 / 裁判年月日: 昭和37年5月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者の主張する契約関係と裁判所が認定した契約関係との間に社会観念上の同一性が認められる場合、裁判所が当該認定に基づき判決しても処分権主義に反しない。また、主たる賃貸借契約が終了した場合、これに付随し運命を共にする趣旨の従たる転貸借契約も当然に終了する。 第1 事案の概要:賃貸人(被上告人)は、建…
事件番号: 昭和40(オ)554 / 裁判年月日: 昭和42年9月14日 / 結論: 棄却
甲に対して建物明渡を命じた判決に基づき、当該訴訟の原告乙の単独申請によつてされた右建物の所有権移転登記であつても、右登記が実体的権利関係に合致しているのみならず、甲が右登記義務履行について有する同時履行の抗弁権も消滅しており、かつ、登記当時他に右建物の帰属について利害関係を有する第三者が存在していない場合には、甲は、右…
事件番号: 昭和33(オ)79 / 裁判年月日: 昭和35年8月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本人が代理人に対して特定の法律行為(本件では不動産の売買契約)を行うための権限を授与していた場合には、当該代理人が本人の名において行った行為の効果は本人に帰属する。 第1 事案の概要:本件において、上告人の代理人であるDは、被上告人である宮城県との間で、上告人が所有する本件建物を売り渡す旨の売買契…