一、共有者の一人の単独名義に所有権の登記がされている場合には、その登記が保存登記であり、かつ、第三者のための登記が存在しないときでも、他の共有者は、右所有権の登記につき、自己の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続を求めることができるにすぎず、その全部の抹消登記手続を求めることはできない。 二、共有者の一人から他の共有者に対する所有権保存登記全部の抹消登記手続を求める請求は、共有持分に応ずる更正登記手続を求める申立を包含するものと解して、その限度でこれを認容することができる。
一、共有持分に基づく所有権保存登記抹消請求の許否 二、所有権保存登記の全部抹消を求める請求と更正登記手続を命ずる判決
民法249条,不動産登記法63条,民訴法186条
判旨
共有者の一人が単独名義で所有権保存登記を経由している場合、他の共有者は自己の持分を侵害する範囲でのみ抹消登記(更正登記)を請求でき、登記全部の抹消を求めることはできない。
問題の所在(論点)
共有者の一人が勝手に単独名義で所有権保存登記をした場合、他の共有者は、当該登記が実体の一部(名義人の持分)と合致していても、妨害排除請求としてその全部の抹消を請求できるか。
規範
共有者の一人の単独名義でなされた登記であっても、その者の持分に関しては実体関係に符合する。したがって、他の共有者は、自己の持分についてのみ妨害排除請求権(所有権に基づく妨害排除請求権としての登記請求権)を有するにすぎない。ゆえに、登記を実体的権利関係に符合させるためには、自己の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続を求めることができるにとどまり、登記全部の抹消登記手続を求めることはできない。この理は、対象が所有権移転登記であるか保存登記であるかを問わず、また第三者の登記が存在しない場合であっても同様である。
重要事実
事件番号: 昭和41(オ)1223 / 裁判年月日: 昭和42年3月23日 / 結論: 棄却
不動産の単独所有を主張してその所有権確認を求めたのに対し、裁判所が単独所有の事実を否認するとともに、これが相手方との共有に属ずることを認定して、その持分の割合に応じた持分権を有する旨確認し、また、右不動産について、自己から相手方のためになされている所有権移転登記の抹消を求めたのに対し、右自己の持分についてのみの一部抹消…
本件建物について、共有者の一人である上告人(被告・反訴原告)が、自己の単独名義で所有権保存登記を了した。これに対し、別の共有者である被上告人(原告・反訴被告)が、実態は上告人と被上告人の持分各二分の一ずつの共有であると主張し、上告人名義の所有権保存登記の全部抹消登記手続を求めて反訴を提起した。
あてはめ
本件建物の実体的な権利関係は、上告人および被上告人が各二分の一の持分を有する共有である。上告人名義の単独保存登記は、上告人の持分二分の一の範囲内では実体関係に符合している。そうである以上、被上告人が有する妨害排除請求権の範囲は、自己の持分二分の一を侵害されている限度に限定される。したがって、被上告人は上告人に対し、自己の持分を反映させるための「共有持分各二分の一とする更正登記」を求めることはできるが、実体と符合する上告人持分相当分を含めた「登記全部の抹消」を求めることは、請求の範囲を逸脱しており認められない。
結論
他の共有者は、自己の持分に応ずる更正登記手続を求める限度で請求が認められる。全部抹消請求のうち、更正登記を求める趣旨を包含すると解される範囲(持分二分の一の更正)についてのみ認容し、全部抹消を求めるその余の請求は棄却すべきである。
実務上の射程
「実体関係と符合する範囲」での登記の有効性を重視する判例である。所有権保存登記であっても移転登記であっても、名義人が一部でも持分を有する限り、全部抹消ではなく「更正登記」を選択すべきという実務上の指針となる。答案上は、物権的登記請求権の発生要件として「登記が実体と符合しないこと」を検討する際、一部符合する場合の帰結(一部抹消/更正の法理)として引用する。
事件番号: 昭和39(オ)126 / 裁判年月日: 昭和42年6月30日 / 結論: 破棄自判
賃借人甲の居住する家屋およびその敷地を所有する乙が、他へ移築しその敷地を使用しない特約付で右建物を丙に譲渡すると同時に、右敷地の持分を丁に譲渡した場合には、乙丙間の敷地使用券を発生せしめない旨の合意にもかかわらず、丁は、甲に対して建物から退去してその敷地を明け渡すことを請求することができない。
事件番号: 昭和56(オ)817 / 裁判年月日: 昭和59年4月24日 / 結論: その他
共有者の一部の者の名義に所有権移転登記又は所有権移転請求権仮登記がされている場合に、他の共有者が妨害排除として右一部の者に対して請求することができる登記手続は、自己の持分についての一部抹消(更正)登記手続に限られる。