賃借権に優先する抵当権が競売により消滅すべき場合には、該賃借契約が競売申立記入登記のなされる前に締結され、対抗要件を経由した場合であつても、抵当権に対抗しえない結果、競落により抵当権とともに消滅するものと解すべきである。
賃借権に優先する抵当権が競売によつて消滅すべき場合と右賃借権消滅の有無
民訴法649条,民訴法700条
判旨
抵当権設定登記後に成立した賃借権は、たとえ競売申立登記前に対抗要件を備えていたとしても、抵当権に対抗できない以上、抵当権者が申し立てた強制競売による売却の結果、消滅する。
問題の所在(論点)
抵当権設定登記後、強制競売の差押登記前に賃借権の対抗要件を備えた場合、抵当権に基づかない強制競売の手続きによって、当該賃借権は消滅するか。
規範
抵当権が設定され、その登記が完了した後に成立した土地賃借権は、借地借家法(旧建物保護法)等の対抗要件を備えていたとしても、登記済みの抵当権には対抗できない。抵当権を目的とする競売(競落)の性質上、抵当権に対抗できない権利はすべて消滅せしめられるべきであり、これは抵当権者が抵当権に基づく実行(任意競売)ではなく強制競売の手続きを選択した場合であっても同様である。
重要事実
本件土地には昭和26年に抵当権が設定され、登記されていた。その後、昭和28年頃に建物所有目的の賃貸借契約が成立し、建物保存登記(対抗要件)がなされた。建物所有権および賃借権を譲り受けた上告人に対し、抵当権者と同一人物が申し立てた強制競売によって土地を競落した被上告人が、建物収去土地明渡しを求めた。
事件番号: 昭和34(オ)1276 / 裁判年月日: 昭和35年10月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強制競売によって建物の所有権を取得した事実は、登記の推定力に依拠せずとも、執行手続等の客観的事実に基づき認定することができる。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は、強制競売の手続を通じて、本件建物および宅地の所有権を取得した。これに対し、上告人(被告)側は、原審が「登記の推定力」によって被上告人…
あてはめ
本件賃借権は、抵当権設定登記がなされた後に出現したものである。土地上の建物に保存登記がなされており対抗要件自体は備わっているが、先行する抵当権には劣後する。強制競売であっても、抵当権者はその抵当権の優先弁済権を確保する必要があり、競落の効果として抵当権が消滅する以上(旧民訴法649条2項)、これに対抗できない賃借権もまた消滅すると評価される。したがって、上告人は競落人である被上告人に対し賃借権を主張できない。
結論
抵当権に対抗できない賃借権は、強制競売による競落によって消滅する。上告人は、被上告人に対し本件土地の賃借権を対抗できない。
実務上の射程
抵当権に遅れる賃借権が消滅するという「消滅主義」を、抵当権実行(任意競売)だけでなく、抵当権者が申し立てた強制競売の場面にも適用した判例である。答案上は、不動産上の負担が競売によってどう処理されるかを論じる際、設定の前後関係を基準に消滅の成否を判断する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和31(オ)465 / 裁判年月日: 昭和32年12月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地上の建物について登記が存在しない場合には、「建物保護ニ関スル法律」1条による対抗力は認められない。また、建物の収去を求める請求が権利の乱用とされるか否かは、事案の具体的経緯に照らして慎重に判断されるべきである。 第1 事案の概要:上告人は土地を賃借しその上に建物を所有していたが、当該建物につい…
事件番号: 昭和36(オ)304 / 裁判年月日: 昭和36年9月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】借地法10条(現行借地借家法14条)に基づく建物買取請求権は、買取請求の意思表示の時点において、土地賃借権が有効に存在していることを要件とする。 第1 事案の概要:上告人A1及びA2が、被上告人所有の土地を賃借し、その地上に建物を所有していた事案において、賃料の支払をめぐる争い等により賃貸借関係の…
事件番号: 昭和34(オ)1106 / 裁判年月日: 昭和37年3月27日 / 結論: 棄却
宅地およびその上の建物を甲が所有していたところ、抵当権の実行により乙が建物を競落して、法定地上権を取得し(その後に宅地につき土地区画整理法によつていわゆる現地換地による仮換地の指定がなされた)、次いで丙が地上権とともに建物を譲受け、さらにその後丁が甲から宅地を譲受けてそれぞれ所有権移転登記を経由した場合においては、丙が…
事件番号: 昭和30(オ)566 / 裁判年月日: 昭和31年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】土地賃借権の登記がなく、かつ地上建物にも登記がない場合、賃借人はその賃借権を土地の新所有者に対抗することはできない。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)は、本件土地について賃借権を有していた。しかし、当該賃借権の登記は未了であった。また、上告人は本件土地上に建物を所有していたが、被上告人(新所有者…