民法第六〇二条所定の期間をこえる土地賃貸借は、その登記が抵当権設定登記後になされたものである以上、同条所定期間内においても、抵当権者及び競落人に対抗できない。
民法第六〇二条の期間をこえる土地賃貸借の抵当権者及び競落人に対する効力。
民法395条,民法602条
判旨
抵当権設定登記後に登記された民法602条所定の期間を超える賃貸借は、抵当権者及び競落人に対抗できない。この場合、短期賃貸借の範囲内であっても対抗力は認められない。
問題の所在(論点)
抵当権設定登記後に登記された、民法602条所定の期間を超える賃貸借は、抵当権者及び競落人に対抗できるか。また、その期間を短期賃貸借の範囲内に短縮して対抗力を認めることができるか(旧民法395条の解釈)。
規範
抵当権設定登記の後、当該不動産につき民法602条所定の期間を超える賃貸借の登記がなされた場合には、当該賃貸借は、抵当権者及び抵当権実行による競落人に対抗し得ない。また、このような期間を超える賃貸借について、同条所定の期間の限度で対抗力を認めることもできない。
重要事実
不動産につき抵当権設定登記がなされた後、当該不動産について民法602条所定の期間(山林10年、その他の土地5年、建物3年、動産6ヶ月)を超える期間の賃貸借契約が締結され、その登記がなされた。その後、抵当権が実行され、上告人が当該不動産を競落した。賃借人である被上告人は、競落人である上告人に対し、当該賃貸借の対抗力を主張した。
あてはめ
本件賃貸借は、その登記がなされているものの、不動産上の抵当権設定登記後になされたものである。さらに、その内容は民法602条所定の期間を超えるものである。このような賃貸借は、抵当権の把握する交換価値を侵害するおそれがあるため、抵当権者およびその承継人である競落人に対抗できない。原審は短期賃貸借の期間内において対抗力を認めようとしたが、期間を超える契約自体が対抗力を欠く以上、一部を切り出して対抗力を認めることは法令の解釈として誤りである。
結論
本件賃貸借は競落人に対抗できず、被上告人の請求は棄却されるべきである。
実務上の射程
本判決は、平成15年民法改正前の短期賃貸借保護制度下のものであるが、抵当権と後順位利用権の優先関係の基本原則を示す。現行法下では短期賃貸借保護制度が廃止され、395条は「抵当建物明け渡し猶予制度」に改められているが、登記の前後で優劣を決する原則や、抵当権者に劣後する賃貸借の対抗力を否定する法理の理解として依然重要である。
事件番号: 昭和33(オ)1038 / 裁判年月日: 昭和35年10月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】抵当権設定登記後に登記された民法602条所定の期間を超える賃貸借は、抵当権者に対抗することができず、抵当権者は当該賃貸借の設定がないものとして抵当権を実行し得る。 第1 事案の概要:上告人(抵当権者)は、本件家屋について抵当権を有し、その設定登記を済ませていた。その後、債務者である被上告人らが、本…
事件番号: 昭和44(オ)932 / 裁判年月日: 昭和44年12月11日 / 結論: 棄却
抵当権設定後競売開始決定までの間に設定された短期賃貸借は、民法六〇二条所定の期間後は当然に効力を失い、法定更新されない。