建物に対し根抵当権が設定かつ登記された後になされ賃貸期間を少くとも一〇年とする当該建物の賃貸借は、右建物の競落人に対抗できない。
根抵当権設定後になされた賃貸期間を少くとも一〇年とする建物賃貸借の対抗力。
民法395条,民法602条
判旨
抵当権設定登記後に成立した建物賃貸借の賃借人は、その賃借権をもって、競落人(買受人)に対抗することができない。
問題の所在(論点)
抵当権設定登記の後に成立した建物賃貸借の賃借人は、抵当権の実行により建物を取得した競落人に対し、賃借権を対抗できるか。
規範
不動産に関する物権の変動や賃貸借の対抗力は、登記(または建物保護法等による備え)の前後によって決せられる。抵当権が設定され、その旨の登記がなされた後に成立した賃貸借契約に基づく賃借権は、抵当権の実行による競落人(買受人)に対して対抗することができない。
重要事実
上告人(賃借人)は、本件建物につき昭和29年または30年に賃借したと主張したが、原審は証拠に基づき、実際の賃貸借成立日は昭和31年8月1日であると認定した。一方で、本件建物には昭和31年6月7日に根抵当権が設定され、同日その旨の登記がなされていた。その後、抵当権が実行され、被上告人が本件建物を競落した。
あてはめ
本件において、根抵当権の設定およびその登記がなされたのは昭和31年6月7日である。これに対し、上告人の賃借権が成立したのは登記後の昭和31年8月1日である。対抗要件の優劣は時期の先後によって決せられるところ、本件では根抵当権の登記が賃借権の成立に先行している。したがって、後順位の権利である賃借権は、抵当権の実行によって不動産を取得した被上告人に対して優先しない。
結論
上告人は、その賃借権をもって競落人である被上告人に対抗できない。
実務上の射程
抵当権と利用権の優劣に関する基本原則を確認したものである。民法605条の2第1項等の現行規定下においても、抵当権設定登記に後れる賃借権は競落人に対抗できないという結論は維持される。答案上では、抵当権実行による不法占拠者排除や明渡請求の可否を論じる際の前提となる対抗関係の判断基準として用いる。
事件番号: 昭和35(オ)253 / 裁判年月日: 昭和37年9月18日 / 結論: 棄却
不動産について仮差押登記がなされた後その債務者から同不動産を賃借した者は、当該賃貸借をもつて仮差押事件の本案判決の執行により同不動産を取得した競落人に対抗することができない。