不動産について仮差押登記がなされた後その債務者から同不動産を賃借した者は、当該賃貸借をもつて仮差押事件の本案判決の執行により同不動産を取得した競落人に対抗することができない。
不動産に対する仮差押の効力。
民訴法751条,民訴法644条
判旨
不動産仮差押えがなされた後に、その目的物件について賃貸借契約が締結された場合、当該賃貸借は仮差押債権者およびその後の強制執行による買受人に対抗することはできず、明渡しを拒むことはできない。
問題の所在(論点)
不動産の仮差押えが執行された後に当該物件について締結された賃貸借契約の賃借人は、仮差押債権者やその後の権利承継者に対し、当該賃貸借を対抗して明渡しを拒絶できるか。
規範
不動産が仮差押えの目的となっている場合、その後の処分行為は仮差押債権者に対抗できない。これに基づき、仮差押後に締結された賃貸借契約は、仮差押債権者やその執行手続を承継した者に対し、その権利を主張して目的物の占有を継続する正当な権原とはならない。
重要事実
上告会社(被告)は、訴外Dとの間で本件土地建物について賃貸借契約を締結し占有を開始したが、その時期は昭和29年7月初め頃であった。しかし、これに先立ち本件不動産には仮差押えがなされていた(またはその執行手続の制約下にあった)。その後、被上告人(原告)が本件不動産の所有権を取得し、上告会社に対し建物の明渡し、収去および土地の明渡しとともに、不法占有による損害金の支払いを求めて提訴した。
あてはめ
本件における賃貸借契約の成立時期は昭和29年7月初めであり、これは仮差押えによる処分禁止の効力が生じた後である。民事訴訟法(旧法644条、現行民事保全法等参照)の趣旨に照らせば、仮差押目的物件について成立した賃貸借は、その内部関係においては有効であっても、仮差押債権者等との関係では対抗し得ない。したがって、上告会社は賃借権を被上告人に対抗できず、明渡し義務を免れない。また、損害金の請求において、建物と敷地の使用による損害を区分して請求する必要はなく、一括して算定した原審の判断は相当である。
結論
仮差押え後の賃借人は、仮差押債権者およびその承継人に対し賃借権を対抗できないため、被上告人の明渡請求および損害金請求を認めた原判決は正当である。
実務上の射程
仮差押えの処分禁止的効力が、物権的処分のみならず賃貸借のような利用権の設定にも及ぶことを確認した事例。司法試験においては、民事保全法に基づく処分禁止の効力や、不法占有に基づく損害賠償請求における「損害」の特定・主張の要否(区分不要論)を論じる際の基礎となる。
事件番号: 昭和33(オ)903 / 裁判年月日: 昭和35年10月14日 / 結論: 棄却
賃貸中の家屋に対する強制競売開始決定が債務者に送達された後、債務者が賃借人と何等合理的理由なしに賃料を半額に減額する旨合意しても、これをもつて競落人に対抗することはできない。