国税滞納処分の差押登記後の家屋賃借人が家屋の引渡を受けても、右賃貸借を競落人に対抗できない(昭和二九年(オ)一三号、昭和三〇年一一月二五日二小判決参照)から、賃借人から右家屋の一部を転借して占有するに至った者も占有権をもって競落人に対抗できない。
滞納処分の差押登記後の家屋賃借人から一部転借した者の占有権は競落人に対抗できるか。
借家法1条,国税徴収法(昭和34年改正前)第3章
判旨
不動産に対する国税滞納処分による差押登記がされた後に、滞納者と第三者との間で成立した賃貸借契約に基づき当該不動産の引渡しを受けた者は、その賃借権をもって競落人に対抗することはできない。
問題の所在(論点)
国税滞納処分による差押登記がされた後に成立した家屋賃貸借の賃借人は、家屋の引渡しを受けていたとしても、その賃借権を競落人(買受人)に対抗できるか。
規範
国税滞納処分による差押えは、処分の目的たる財産の処分を禁止する効力を有する。したがって、差押登記後に成立した賃貸借契約、およびこれに基づく引渡しという対抗要件の具備は、差押えによって生じた差押債権者(およびその後の競落人)の権利を害する限度で、これに対抗することができない。
重要事実
1. 被上告人は、前主Dに対する国税滞納処分による競落により本件家屋の所有権を取得した。2. 本件家屋には、昭和25年4月25日に滞納処分による差押登記がなされていた。3. 上告人の叔父Eは、差押登記後の昭和33年6月1日にDから本件家屋を賃借し、上告人はEからこれを転借して一部を占有している。4. 被上告人は、所有権に基づき、対抗権原のない上告人に対し家屋の退去明渡を請求した。
あてはめ
本件では、被上告人が競落により所有権を取得する前提となる差押登記が昭和25年になされている。これに対し、上告人の占有権原の源泉であるD・E間の賃貸借契約は、差押登記から約8年経過した昭和33年に締結されたものである。差押登記後に成立した賃貸借は、差押えの処分禁止効に抵触するため、たとえEが建物の引渡しを受けていたとしても、差押債権者の地位を承継した競落人(被上告人)に対してはその優先権を主張できない。したがって、Eからの転借人である上告人も、被上告人に対し適法な占有権原を主張し得ない。
結論
差押登記後に成立した賃貸借は競落人に対抗できない。よって、被上告人の明渡請求は認められる。
実務上の射程
滞納処分に限らず、民事執行法上の差押登記(強制オークションの開始決定等)についても同様の理が妥当する。実務上は、差押登記の前後という客観的事実によって対抗力の有無が画一的に決まることを確認した判断であり、抵当権と賃貸借の優劣関係(民法395条等)を検討する際の基礎的な論理として機能する。
事件番号: 昭和37(オ)958 / 裁判年月日: 昭和38年3月14日 / 結論: 棄却
建物に対し根抵当権が設定かつ登記された後になされ賃貸期間を少くとも一〇年とする当該建物の賃貸借は、右建物の競落人に対抗できない。